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建築の法律にアプローチして生まれた“オフィスビル”の新しい形態[観察スケッチ]

オフィスビルや雑居ビルの設計に興味があったので、グッドデザイン賞と日本建築学会賞を受賞した、荒川ビル[スタジオノラ+日建設計]の観察スケッチを行いました。
造形の特徴もありますが、根本的な発想が本当に新しくてこれからのビル設計の常識を変えるんじゃないかと思えたので是非実際に観に行きたいと思っている建築です。

インスタグラムで観察スケッチのメイキング動画を発信しています。こちらもよろしければご覧ください。

◾️避難階段でビルをデザインすることで機能的なメリットを作っている

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外側にぐるりと巻きついている階段は建築法規上では避難階段の扱い。オフィスビルを設計する時には必ずつけなければならない非常用の階段をあえて前面に展開することで日常的な階段の利用を促し、ビルの背面に配置するはずだった避難階段を無くすことで各階の平面積も増やせるという試み。

また、階段の巡りを一定にせずに各階で異なる平面形状に設計することで利用者が自身の使用するフロアを「ただ1つのもの」と愛着を持ちやすくなるような工夫も施されている。

全ての階が同じような空間になってしまうというオフィスビルの普遍的な問題点を非常階段をデザインすることで解決する、一石二鳥の効果的なアイデア。

◾️階段やテラスの上で起こる“アクティビティ”を建物の外装にする新しい考え方

通常のオフィスビルでは建物の表面は壁材やガラスで覆われており、ガラスの向こうにチラチラと働く人の様子が見えるだけになっている。

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つまり、そのビルの外観デザインの良さは内と外を分ける壁材やガラスの表情がいかにスタイリッシュで、時代のトレンド感が出ているかに左右されてしまう部分が大きいと思う。

しかし、このビルは表面に巻かれた階段や突き出たテラスの上で起こる人の活動そのものが建物の表情として見えてくる。

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建築がメインではなく、人間がメインの外観デザインなんて、少なくとも僕はオフィスビルでは聞いたことがない。

この建物がグッドデザイン賞や数々の賞を受賞している理由はこの外装デザインの着想点にあると思った。

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法律にデザイン的なアプローチをしてオフィスビル設計の新しい形を示しただけでなく、彫刻的な美しさが正しいとされた時代から、建築デザインの定義が大きく変わり始めている証明だと感じて、描いていてワクワクが止まらない観察スケッチでした。

建築の美しさそのものではなく、人間の活動がメインの外観デザインで街が賑わう風景をいずれ見てみたいですし、僕もそうした暖かさを感じるデザインをできるようになりたいと思える良い機会でした。

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