プロマジシャンに必要なスキル
カッツの3能力
マジシャンとして成功するためには、どのようなスキルが必要なのだろうか。これからマジシャンを始める者も、現在マジシャンとして仕事をしている者も、その職業に必要とされる能力を勉強することは有用であるだろう。
実は、マジシャンとして成功するための能力は、マジシャン以外で成功するための能力とほとんど同じであると考えられる。たとえるならば、人間のDNAとチンパンジーのDNAは99%が同一であるという話に似ているだろう。ほんのわずかなDNA上の違いが、人間とチンパンジーを分類してしまうように、ほんのわずかなスキルの差が、職業を分類し、それがプロマジシャンであったり、プロ野球選手であったりする。
ところが、多くのマジシャンが、ほんのわずかなスキルの差を重要視しすぎるがゆえに、それよりも遥かに重要である「大部分の共通点」を磨くことを疎かにしているように見受けられる。それでは、他の職業人との、すなわち顧客との意識が乖離し、仕事を依頼されることもなくなり、成功から遠のいてしまうことになる。
ここでは、ハーバード大学教授のロバート・カッツが提唱した、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキルという3つの能力を紹介する。
プロマジシャンに必要なスキル
■コンセプチュアルスキル
主にビジネスの場において必要とされる複雑な問題を合理的に整理、判断する能力
物事の本質を把握する能力
〇理念・哲学 〇戦略思考・策定 〇マネジメント
■ヒューマンスキル
人間関係を良好に保つための能力
対人関係能力
〇事故洞察力 〇対人関係 〇バイタリティ 〇リーダーシップ 〇人格
■テクニカルスキル
特定分野の業務を遂行するために専門知識や技術
〇専門技術 〇専門知識 〇折衝力
コンセプチュアルスキルとは、主にビジネスの場において必要とされる複雑な問題を合理的に整理、判断する能力であるが、つまりは物事の本質を把握する能力のことで、組織で言うならば社長に求められるスキルである。
コンセプチュアルスキルには、理念・哲学であったり、戦略思考・策定であったり、マネジメントであったりの能力が含まれることになる。
理念・哲学を考え、正しい価値観を持って正しいゴールを設定し、戦略思考・策定を用いて、ゴールに対しての中間地点や道筋を定め、そこで決めたことをマネジメントで実行する、というのが、このコンセプチュアルスキルの役割になる。
ヒューマンスキルとは、人間関係を良好に保つための能力のことで、対人関係能力とも呼ばれる。組織で言うなら、幹部や中間管理職に求められるスキルである。
マジックが、観客がいてこそ成立するエンターテイメントである以上、マジシャンとしても、観客と良好な関係性を築くことは重要であるだろうし、そもそも関係性が悪ければ、仕事を依頼されることもないだろう。
ヒューマンスキルが高いと、他人の能力をうまく使えるようになる。個人個人には、得手不得手があるだろうが、不得手な部分に他人の手を借りる力が、対人関係能力なのである。これが苦手であると、不得手な部分でも自分の力で解決せねばならなくなり、効率の悪い仕事をしなければならなくなる。
テクニカルスキルとは、特定分野の業務を遂行するために専門知識や技術のことであり、このスキルが取りも直さずその職業をその職業たらしめているスキルである。マジシャンで言うならば、マジックをする技術がこのテクニカルスキルに含まれており、職業人の生命線だとも言えるスキルである。組織で言うと、現場社員のスキルということになるだろう。
さて、テクニカルスキルは職業人であるためには必要不可欠な生命線であるのだが、しかし生命線だけ確保すれば成功者になれるのかと問われると、答えは否である。生命線とはギリギリ死なないためのラインであり、成功するためのラインは遥か上空にあるのである。
マジシャンにおけるマジックは、このテクニカルスキルの中でも専門技術というひとつのジャンルでしかなく、その重要性は、全体像から見れば、1割か2割程度であることだろう。つまり、もし「マジックが上手ければマジシャンとして成功できる」と思っている人がいたとしたら、その人にはその5倍から10倍ほど、学ばなければならないことがある、ということになる。
また、組織ではそれぞれ社長、幹部、社員に必要なスキルであると述べたが、フリーランスや個人事業主であれば、社長も幹部も社員も同一人物であり、すべてのスキルを持たなければならないだろう。
ここでは、このカッツの3能力について、それぞれをさらに掘り下げて説明していくことにしよう。
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