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世迷言

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誰にも言えない言葉を遺します。
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1日の帰り道。まだ帰りたくないままに珈琲屋に入る。前に置かれた蝋燭が自分だけに火を上げる。携帯の充電はない。火が消えるまではと、買ったばかりの本を捲る。珈琲は美味しかったはずだ。100万回生きたねこ。

富山生活が終わる。4年前と今日。入試直後と卒業式直後に母と同じ白海老丼を食べる。こんな味だったけな。あの時「合格するか五分五分」と言った。140字では語れない思い出。明日アパートの鍵を返す。あの時と白海老丼の味は同じだったかもしれない。社会人生活が始まる。

落ち着いている時の運転は遅い。逆に焦る時は激しい音調の曲が聴きたくなる。

何かに焦る人を見かけた。暗い道の中、他の車を次々に抜き去っていく。

落ち着きは余裕から生まれると考える。
彼のせいで自分まで焦る気持ちはどうすれば良いだろうか。

彼に子供が産まれたのかもしれない。

震災から何年、戦争から何年。報道の度に違和感に思う言葉がある。
「体験した人でないと分からない」
一見最もらしい言葉だが、それは当事者と部外者を線引きし、干渉を妨げ関心を遠ざける。『氷柱の声』でも、気を遣い声を出せなかった。意識を残す為にも余所者の拭わない気持ちを察するべきだ。

電車が止まり人が押し出される。知らない人達を遠くから見ている。それぞれに生があり、今まさに何かをしようと放たれる。もしあの人が知り合いなら、どんな影響を与えてくれるだろうか。トゲに丸みは要らないけれどね。

警察署に行った。「コロナ禍の為、ご了承ください」と共に、寂れたビニールが本棚に掛かる。ウイルスが流行り早3年、人の様々な気持ちが果たせないまま仕舞われ燻る。手に取れなかった本達は、いつ日の目を見るのか。錆びれる方が先な気もするが。

美容院に行った翌日、有り得ない長さの毛が鼻から顔を出す。君はいつ、どのタイミングで入り込んだのかな。雪に隠れて暖を受ける草のように、きっと春が来るのを待ちきれなかったのだろう。

新入社員研修。突飛な状況での登場人物の言動に優劣を付けて討論を行う。含みや焦点の差から私は他者と意見が異なった。少数派を敬遠し多数派である事に歓びを感じながら整合性を求める。大多数の一部ではどちらの方が相応しいのか。真っ直ぐに頷く顔が画面に並ぶ。自分だけが誰とも目が合わないまま。

焦燥感を拭えない夜。
本を読むにも卒論を書き上げるにも及ばない力。
環境や自身の変化が迫る中で少し疲れました。
外に出て大きく笑いながら鍋を囲みたいですね。お腹すいた。