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詩たち

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2024年1月の記事一覧

詩「至るアパート 二階 角部屋」

詩「至るアパート 二階 角部屋」

20240121

時間が止まる 何もない部屋の中
肉体の隅々まで巡らせてみる
感覚だけがある やがて溶けてゆく
それで良い 彼は包まれたような気分になる

歪んだギターの音で目を覚ました少年がいる
いつの頃だったか それは彼にとても似ている
十分に腐ってしまった果実を大事に抱える
頭を振るとカラカラの頭がマラカスになる

全てをかち割りたくなったので目隠しをする
何もない部屋で腕を振る音がする

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詩「チーズを探して」

詩「チーズを探して」

20240117

いとも容易くブルータスになれる
彼は裏切りを着飾って歩く
煙草の煙は鎧のように彼を包む
強い風を受けても飛ばされない

「大切な人がいた気がする
 もう二度と会わないだろう
 それで良かったと安心する
 大切なものなど必要ない」

彼を信じる者は救われない
彼を通り過ぎる者は歩き出す
情など何の足しにもならない
裏切りは時に優しさでもある

本当に裏切ったのだろうか?
彼がそう

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短歌集「gem」part1 /ポエトリーリーディング

Kindleで販売している自作の短歌集のポエトリーリーディングです。

色々なパターンで撮ってます。

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是非チェックしてください。

短編「poet」

短い映画を撮ってみてって言われて思いついたのは、カメラを自分に向けて設置して話すだけということで、思いついたことを話していたら詩人としての言葉を吐いていた。

別の話だけど、最近「詩人」とか「詩」という言葉で自分を縛ることさえも嫌になってきた。一つに括られるのも。
それでも、この動画のスタンスは変わらないので、僕はいつまでも誰か(読者)を待ち続けている。

詩「声」

詩「声」

聞いている
聞こえている
自分の中だけで
外側には聞こえない
誰にもわからない
それが安心する
だからこそ内側で育つ
汚れてゆく
彼が増殖する
俺はどこにいる
聞こえている
確かに聞こえている
声が重なってゆく
耳を塞いでも届いている
心が分離しそうになる
寂しさが雪のように降り積もる
それでも誰かに頼ることはなく
ただ声に振り回されている
聞こえている
嘘すらもよく聞こえている
返事が出来ない

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詩「アルミホイル」

詩「アルミホイル」

20240110

アルミホイルに包まれて
眠りに落ちる銀の夜
奥歯に染みる不快感
雑な電波は届かない

引っ掻くような音の先
彼を見つめる目が二つ
光を放ち映された
シルエットにはタコの足

愉快な歌で起こされて
スーツに着替え電車乗り
目的地には廃墟だけ
埃まみれの仕事する

帰りの駅は賑やかで
酒を一杯飲んだなら
機嫌が治り開けるドア
広がる闇は六畳間

悲しい色の壁紙に
ペンキを塗るのが楽

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詩「物の命」

詩「物の命」

20240110

頼む 俺のために死ぬな
頼むから もう一度息をしてくれ
名もなきものども 俺のために
もう一度だけ動いてくれ

テレビ ラジカセ ゲーム機
パソコン ビデオカメラ エアコン
掃除機 電動歯ブラシ ドライヤー
炊飯器 電子レンジ IH

俺のために生きて 俺のために死んだ
全てのものどものために涙を流そう
いきものとは限らないものどもは
いつも寡黙に生活に彩りを与えていた

鉛筆

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詩「彼」

詩「彼」

20240102

最期の瞬間に思い浮かべるものが
誰かの顔であれと望んだ
無数に別れて伸びる道が
次第に減ることを感じながら

ハサミで切り取った写真で
コラージュを作った壁紙が
台無しにされた部屋の中で
一杯のコーヒーが冷えてゆく

ボサボサの頭に走る痒みが
記憶のせいだとしても
彼は気にしないようにした
ひたすらにキーボードを打ちながら

紙飛行機を作ろう
必要なことだけを書き残して
無駄話

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