アイデンティティは創造性の源泉だ
今年もやってきました、MIMIGURIアドベントカレンダー
ここまで、ちょっとボリュームありすぎでは…?というエントリーが続いております笑
前回は押田さんの 「対話の暴力性」について考える
対話の場のケアという観点から、対話やファシリテーションの本質に迫っています。他の記事含め、まだの方はぜひご覧ください!
https://adventar.org/calendars/9574
さて、そんなアドベントカレンダー今年は少し自分のことを見つめ直し、2023年を振り返りながら書いていこうと思います。
「MIMIGURI」という存在の中での葛藤
今年の5月ごろ、メンタルの不調をきたして、品川駅の駅ナカのカフェで動けなくなってしまった、という出来事がありました。
体が上手く動かせず、勝手に涙が出てくるという、典型的な症状で、前に本を書いていた時にも似たような状態に陥ったことがあったので、これはまずいとすぐにわかりました。
MIMIGURIは、そういう時とても心強い組織です。直属の上長にあたる安斎さん始め、みんなが人が話を聞いてくれました。
色々な人が話を聞いてくれる中で気がついたのは、「自分で自分のゼンマイが回せていない」という状況に自分が陥っていることでした。
MIMIGURIも5年目になり、ファシリテーションドメイン、コンサルティングドメインでチームを持ち、そのチームを解散して研究開発本部に所属しと、様々な経験をさせていただいた中で、徐々に自分が持つべきボールが逆にわからなくなってきてしまい、自分が今のMIMIGURIという組織において、どう貢献すべきなのかがわからなくなっていました。
加えて、mimicry design時代からのプロパーとして働いてきた人間としては、当時よりは知られるようになった「MIMIGURI」という肩書きが自分のアイデンティティの軸になっている現状に、喜びもありつつ、それがなければ何者なのか、自分で自分を捉えにくいというもどかしさも抱えていました。
もちろんMIMIGURIという組織は大好きで、他にこんないい環境なんてないだろうという想いもありました。だからこそ、自分がMIMIGURIというアイデンティティに縛られているという状況の中で、潜在的に葛藤を抱えながら、徐々に自身のアイデンティティのつかみどころを見失ってしまっていたのだと、振り返って当時のことを捉えています。
意味のイノベーションの研究者、リサーチ・ドリブン・イノベーションの共著者、大学の非常勤講師と、冷静に考えれば十分に自分のアイデンティティは確立しているようにも思えます。でも明確に自分の中では、自分のアイデンティティに対して、自信を持つことができなくなっていたのです。
MIMIGURIのみんなに話を聞いてもらう中で、徐々にそれを冷静に捉えられるようになってきました。このメンタルダウンは、自分というアイデンティティを見つめ直す機会であり、どう自分が自分の人生の舵を取っていきたいのか、問い直す時が来たのかも知れないと思えるようになりました。(そして徐々に体調は回復していきました。)
徐々に見え始めた、自分の探究テーマ
そうして自分のこれまで大切にしてきたことは何かを見つめ直す中で、徐々に自分の大切にしたいテーマが見えてきました。
まず、デザインやファシリテーションという営みの中で、自分が最も喜びを感じるのは、自分がデザインしたものや場に触れた人々が、何か考えたくなったり試行錯誤してみたくなったりする気持ちが膨らみ、自分でも思ってもみなかったような景色が広がることだと気がつきました。
どんなに給料が安くとも(笑)大学の授業へ関わることを自分が辞めないのは、最も純粋にその瞬間に触れられるからです。ある学生の子は、自分の授業を受けたことをきっかけに、自分の作品づくりへの想いを深め、大学を休学して活動を始めてくれました。大学を休学させてしまった、というところは悩みますが、それでもその子は目を輝かせて新しいチャレンジに取り組んでくれています。
長野での仕事もそんな瞬間に溢れています。昨年実施した「孜忽書院」今年展開している「日日耕日塾」や「Think Local Academy」と、自分なりに悩みながら新しい働き方や生き方を考えようとするきっかけとなる場づくりに関われている時は、いつも以上に自分が生き生きしているように感じます。
そんな長野での仕事のきっかけをつくってくれたMIKKEの井上拓美くんとも、この1,2年は沢山対話を重ね、彼のポテンシャルを言語化することの力にもなれた感覚があります。(結果的にMIKKEの社外取締役になることになり、これから仕掛ける「文化の台所」というプロジェクトにも関わらせてもらっています。)
MIMIGURIでやってきたことは、なかなかお話しできないことが多いですが、関わる人々がもっと創造的なエネルギーに溢れて、試行錯誤し出す景色に、自分は喜びを感じているのだなと改めて気がつきました。
色々省察していく中で、自分がある意味喜びややりがいを感じているのは、こうした「考えたり、作ったり」したくなるような気持ちが、自分のデザインした何かによって、誰かの中に生じていくことにあるのだと気がつけるようになりました。
新たなアイデンティティの創造が
自己実現と社会的価値探究の鍵を握る
下半期にかけて、自分の探究テーマと向き合っていく中で、徐々に自分の「あり方」をイメージすることができるようになってきて、先日行われたSpectrum Tokyo Festival 2023でも、その一端をお話しさせていただくことができました。
自分のアイデンティティが徐々に見えてきたことで、どんな社会のモノゴトと向き合おうとするのか、どこに自分の専門性を持とうとするのか、徐々に自覚できるようになってきた感覚があり、以前よりも少しだけ、自分を信じることができるようになってきました。
カール・ロジャーズは、「自己実現」とは、自分自身がどのような人間と認識しているか、という「自己概念」と、実際に日々の生活の中にやってくる様々な「経験」の重なりが最大化された状態が実現し(自己一致、自己受容)、自分自身の価値観に基づいて判断・行動ができるようになり、自己の持つ可能性を追求・発揮できるようになった状態と定義しています。
自分の自己概念、つまり自身のアイデンティティが変化したことで、自分にやってくる様々な「経験」と重なりを感じられるようになり、自分が力を発揮できるポテンシャルを見つけられたことで、自分がどんな社会的価値の実現にアプローチし得るかが見えてきたわけです。
自分は何者なのかを探究しつづけ、自分のアイデンティティの新たなポテンシャルに気がつき、そこに生きる意味を見出していく。人生なんてそんなことの連続かもしれません。
これが豊かに起きる場、チーム、組織こそ、創造性あふれる状態になっていくのだろうなと感じますし、自分自身でもその変化を自身で体感している最中です。
冒険的世界観の組織とは
アイデンティティの創発を支える組織
改めて5月からの半年ちょっと、そしてMIMIGURIでの5年間を振り返って、MIMIGURIの掲げている冒険的世界観の組織とは、相互にアイデンティティを創発しあい、そして組織アイデンティティそのものにも変容を生み出していく組織なのだと感じています。
それは決して楽しいだけではなく、ある種の葛藤やもどかしさと向き合い続ける営みです。だからこそ、メンタルダウンしてしまうこともあるんだと思います。(実際アイデンティティの揺さぶりがすごいかかるので、みんな定期的に深くモヤモヤしています笑)
その時に、組織はどうそのプロセスに寄り添えるのか。
ミドルマネージャーは豊かに問いかけを重ねながら、その人のこだわりやとらわれをふかぼったりゆさぶったりすることが大事ですし、それができる関係性や余白を実現することも重要になります。
また組織の中で持つボールが大きくなればなるほど、そこには容易に解き得ないパラドックスと向き合うことになります。
一人ひとりの創造性を高め、より豊かな組織アイデンティティやケイパビリティの構築を実現し、新たな価値を生み出す上では、アイデンティティ創発を豊かに実現していける組織になれるかどうかが鍵を握っている。
これこそが、これからの組織に欠かせない視点だと、はっきりと思えるようになりました。
次の冒険を始めてみる
見えてきた自分の新たなアイデンティティ。でもそれは自覚するだけではダメで、ちゃんと行動に移さなければ意味がありません。
僕が今向き合いたいのは、文化をつくる営みの中で、そこで悪戦苦闘する人たちの中に、もっと考えたり作りたくなる気持ちが湧き上がっていくような場や道具を届けたい、ということです。
例えば高円寺の銭湯「小杉湯」、あるいは上田の鹿の猟師がアプローチしている「罠ブラザーズ」。この数年でいろんなつながりの中で話を聞く中で、いいなと思う文化をつくる人たちも、日々思い悩む日々を積み重ねているのだと肌で感じました。
こうした人たちの中が、もっと良い文化を探究し、インスピレーションあふれる日々を送ってほしい。そうした人たちの、壁打ち相手になれたらいいなと考えています。またこうした試行錯誤そのものを一緒に楽しめる人が増えていったら、魅力的な文化が溢れていく社会になるのではないかと思っています。
そんなこんなで、「ともに練る」をコンセプトとした「co-nel:」という活動を始めることにしました。
文化と向き合う人は、どうしてもこれまで大切にしてきたことと、変化する環境の中で悩みがち。だからこそ、そこに新たなアイデンティティを見出すことが、新たな力になるはずだと考えています。
MIMIGURIでの活動とは別の、もう1つの自分の活動の柱として、誰かの役に立てるよう、そして自分の新たなアイデンティティとの出会いにもつなげていけるよう、ちょっと冒険的にチャレンジをしてみたいと思っています。
この辺りはまたぜひどこかで紹介させてください!
ということで、今年のアドベントカレンダーはこの辺りで締めたいと思います。
皆さんの中に、何かインスピレーションが沸いていたらいいな、と思うばかりです… ぜひ教えてください!
明日はゆみんちょこと東南さんのターンです!こちらもぜひお楽しみください!
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