ノモンハンの夏
半藤一利の憤懣の声満ち満ちる『ノモンハンの夏』を溽暑に読む
虚しきや一万八千余の黙したる英霊のほかは何も得ざりき
無謀かつ独善的で無責任 秀才作戦参謀たち
冷静な文体に滲む嘲笑と罵倒に朱引きす忘れぬよう
堕落せし組織の壟断許したる国の行く末この戦に見し
戦争を否と唱える今の世も八十年前は是と狂ひしを
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リビングで喚く韓ドラ原声の罵りだけはよく聞き取れて
炎天の暑気立ち炎ゆるアスファルトに生ふる鬼薊その茎太く
未だ見ぬ世とわが身とを分かつやうに薄水色のしをり紐あり
夕暮れの蟬の声に交じりゐるつくつくぼうし秋の立つ日に