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あるがままに見る
以前ウクライナで仕事をさせて頂いた経験から、TVニュースを見るとすごく気になります。人が作った国境線の位置の為に憎しみ合い、愚かにも戦争をして多くのそれも同じような民族同士で命を奪い合っています。特に罪のない女性や子供達の命が奪われていると聞くと 心が痛みます。『国境』と言うイメージがない野生動物や渡り鳥には理解できない事でしょう。
先日のケニア国連大使の演説は人々の心を打ちました。『私達の国境線は民族や宗教、歴史に関係なく宗主国であるヨーロッパの人達によって彼らの利権確定の為に引かれました。それでも今は相手を尊重して平和に暮らしています。ロシアはなぜこのような事をするのでしょう』確かに衛星から地球を見ると、どこにも国境線はありません。
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あるがままに見る
美しく澄んだ心には真実が見えます。しかしエゴに満ちた心には複雑な事象しか見えません。例えば『自分が得をしたい』という私欲に基づいた仕事の進め方が簡単な問題を紛糾させてしまう事があります。また『自分を良く見せたい』という言い訳が問題の焦点をぼやけさせて解決を遅らせてしまう事もあります。
『あるがまま』を見る心でなければいけません。私利私欲に基づいた妙な自分の心を作用させるから単純な問題が複雑になってしまうのです。
自分が損をしようが『あるがまま』に物事を視なければなりません。自分に非があれば『自分が悪い』と認めなければなりません。そのような澄んだ目で見ると、問題を単純に見る事が出来て、悩む事はありません。
『自分が楽をしたい』『得をしたい』というエゴの心から離れなければ物事はその真実の姿を現しません。そして、真実に対処するには渦中に飛び込む勇気も持たねばなりません。自ら血と汗を流し、危険を冒す気構えがあれば、多くの問題を解決できるはずです。
昨年アフガニスタンのカルザイ大統領は米軍が撤退すると聞いてそれ程劣勢ではなかったのに国民や部下を置き去りにして自分が一番に国から逃れてタリバンに政権を渡しました。これに対してゼレンスキー大統領は皆と共に戦う意志を見せて戦況を反転させています。『ライオンと細い道』の小話にあるように、危機に際してはリーダーが逃げると危険は倍増すると言います。
人を従わせるという姿勢
一方、視線を日本に向けてみますと『あれだけ能力があって仕事も出来るのに…』と言われながら会社や組織からはみ出してしまう人がいます。力があり、個性的な人を認めない日本社会の狭量さにその理由があるとも言われていますが、事はもっと人間の本質に関わる事だと弘法大師空海さんは言っています。
空海さんは人の価値は名聞明利を貪る心なのかどうかを判断基準として上げています。『人を従えさせるのか』『人に従うのか』他人を自分に従えさせたいという思いは、結局煩悩から来ています。他人を完全に従わせる事は人間の本性からしてどだい無理な話です。人間は一人ひとりが自立している存在だからです。
その事を認めようとせず、従わせようとすると一時は成功した様に見えても長い目で見ると、ことごとく失敗してしまいます。父親が親の権威を振りかざして子供達を従わせようとしても、子供たちは何の理由もなく親には従いません。確かに経験は不足していますが子供と言っても独立した一個の人格です。
親に対して人間的な魅力を感じ、その事に納得しなければ素直に意見を聞く事は無いでしょう。これは今も昔もどこの国でも変わりません。
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これはロシアのプーチン大統領とその部下達の関係に似ています。恐怖を煽って言う事をきかせるという独裁者的統治スタイルでは、部下の心は離れていく一方です。自分の立場が危険なので、相談したところで部下は気に入ってもらえる情報しか口にしませんし的確なアドバイスもしません。部下は何人いても面従腹背、彼は裸の王様状態です。プーチンさんは決して愚かな人ではありませんが、多くを敵に廻し、かなり疲れているのだと思います。