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第9回:沖縄、奄美大島、ニューオリンズ、ジャマイカ等、南国のリズム

第9回は旅先の奄美大島からお届けする「南国のリズム特集」です。奄美大島へ行った目的は、奄美の自然を描いた画家・田中一村さんの美術館へ行く事でした。

南国に来たという事で、沖縄、奄美大島、ニューオリンズ、ジャマイカ等、南の地域の音楽のリズムを楽しむ回になります。(たまたまタイミングが合ったので、旅先でVFXデザイナーのヤヒロユウジと共にトークをしております)

[今回ご紹介する楽曲]


1.ハイサイおじさん / 喜納昌吉

沖縄のミュージシャン、喜納昌吉さんの72年リリースの楽曲です。
タイトルになっている「はいさい」は沖縄の方言でこんにちは、という意味になります。僕等の世代だと、志村けんさんがコントでやっていた「変なおじさん」の元ネタがこの曲ですね。

歌われている内容は、近所の酒飲みのおじさんと少年の会話のやり取りが歌詞になっています。歌の中で少年はおじさんをいじっているんだけど、多分この少年はおじさんと仲が良いんですね。
歌のモデルになったおじさんという人は近所から避けられていたため、お酒をもらいに喜納さんの家を訪ねてきていたという事で、喜納さんがそのおじさんのために作った曲と言われています。
曲の特徴としては、ドラムのリズムが少し跳ねていて(ちょっとスイングしています。)これが少し朗らかな雰囲気を出していますね。

2.渡しゃ / 元ちとせ・中孝介

2018年にリリースされた元ちとせさんのアルバム「はじめうた」というアルバムに収録されている一曲です。
このアルバムは奄美大島の島唄で構成されていて、三線の伴奏で歌を歌う奄美のバック・トゥ・ルーツ的な作品となっています。

この作品は知らなかったのですが、今回奄美大島を旅行するという事で現地の作品を調べていた中で発見しました。元ちとせさんはポップスのイメージがあったのですが、当然現地の島唄も上手いですね。

渡しゃ、の歌の中では、喜界島、大島、与論島徳之島などの言葉が出てきます。元々は島々を行き来する舟漕ぎ達が仕事をしながら歌っていた仕事歌だったと言われています。
三味線に似た三線(さんしん)という楽器の伴奏がグルーヴ感を感じさせます。三線と三味線の違いは、どちらも中国をルーツに持つ弦楽器なのですが、三線は蛇の皮を使用するのに対して三味線は犬や猫の皮を用いています。

3.Iko Iko / Dr.John

ニューオリンズで行われるマルディグラというお祭り(謝肉祭)があり、そこでネイティブアメリカンの儀礼に影響を受けたコスチュームを着た人達が騒ぐのですが、その様子を歌っている曲です。
原曲は1954年にジェイムズ・クロフォードがリリースしたものがオリジナルで、その後、沢山のミュージシャンがカバーをしている古典的な楽曲です。

このドクタージョンのカバーバージョンは1972年リリースの「Gumbo」というアルバムに収録されています。ここで使われているリズムはセカンド・ラインと言われるニューオリンズ特有のリズムパターンで、こういう曲を総称してセカンド・ライン・ファンクと呼ばれたりします。

セカンド・ラインという言葉はマルディグラや葬式の行進時に、棺桶の後ろに続く遺族をファーストラインと呼び、その後ろでマーチングの演奏をするミュージシャン達をセカンド・ラインと呼ぶ事から名付けられています。
ニューオリンズでは亡くなった人を賑やかに送り出す文化があるので、リズムの雰囲気もとても陽気です。

南の地域に旅行する時はニューオリンズの曲を聴いていると現地の気候にマッチするので、個人的に南の島などの旅先ではこの曲をよく聴いてます。

4.King tubby meets rockers uptown / King tubby, Augustus Pablo

ジャマイカで生まれた音楽ジャンル、ダブの創始者とされるキング・タビーの76年リリースの一曲です。
ダブというジャンルはオリジナル楽曲のベースラインやヴォーカル等の一部を用いて、エコーやディレイ等のエフェクト等をかけて別バージョンを作る所から始まっています。音の隙間を作り、曲を流しながらDJがライブでアドリブを出来るような仕組みになっています。現在でいう所のリミックスバージョンですね。

キング・タビーは元々、電気技師をしていた人です。ジャマイカでは当時サウンドシステムと言われる野外で曲を流すための機材があったのですが、それら機材の修理などを請け負っていたと言われています。
自分で機材を作成する事が出来る人で、ミキサーを改造したり、エコーのエフェクト装置を自作していてそのクオリティも高かった。
当時のジャマイカではミキサーにフェーダーが無かったので、彼はフェーダーを自作して、スピーディーにミックスが出来るように作り変えたそうです。そして、キング・タビーが手がけたダブバージョンを入れると作品の売り上げが上がったと言われています。

この曲、king tubby meets rockers uptownでは、オーガスタス・パブロという人がフューチャーされています。彼はメロディカ(ピアニカ)の演奏者で「East Of The River Nile」というアルバムもリリースしてますが、とてもクールな作品です。今回ご紹介の曲でも彼のメロディカの音が部分的に使われていますね。興味のある方は是非彼のソロ作も試聴してみて下さい。


[Happy Sad / 草野洋秋 プロフィール]

https://www.happysadsong.com/

Happy Sad ホームページ:
- HAPPY SAD / Sound designer Hiroaki Kusano (happysadsong.com)

作曲作詞、歌、楽器演奏、録音、ミックスまで一人で行うというスタイルで活動する サウンドデザイナー/シンガーソングライター。2013年、表参道ヒルズにて開催されたMTVとLenovo 主催のクリエイターコンテスト「CO:LAB」にて、自作曲 「Everyday」が国内DJ部門優勝/ファイナリストに選出される。

並行してゲーム作品のサウンドクリエイター職として多数の作品でサウンドディレクションとサウンド制作に参加している。
(Netease Games, Funplus, NHN Playart株式会社, 株式会社スタジオキング,
株式会社ノイジークローク等のゲームパブリッシャーやサウンド制作会社においてサウンドディレクター/サウンドデザイナーとして数多くのコンテンツ制作に関わる)

近年では、CM広告音楽やTV番組BGM、海外アーティストの楽曲リミックス制作等にも参加。BGMや効果音の制作、映像に対して音を付けるMA作業、そして作品全体のサウンドイメージを提案 / 映像側や企画側の要望をヒアリングして音に落とし込むサウンドディレクション業務まで包括的に対応。

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