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値上げを宣言させていただきます。
IYVOでは、ブランドのリリースからこれまで、商品の値段を購入者に決めてもらう「あと値決め」のシステムを続けてきました。
今回ブランドサイトをリニューアルすることをきっかけに、これまでのデータを振り返りながら、今後もこの「あと値決め」の決済手法を用いたプロダクトの提供を継続していくかどうかについて考えていました。
そして悩みに悩んだ末、このタイミングで「あと値決め」での販売を終了することを決めました。
以下、その結論に至った経緯を良かった点、後悔した点に分けてまとめながら記してみたいと思います。
メリットとデメリットを天秤にかけたというと身も蓋もない表現になってしまいますが、でも事業を持続的に成長させていくためには大切な視点です。思い入れや個人の感情だけで生き残っていけるほどやさしい世界ではないということは理解していますし、経営者としてそうした決断を行えるようになったのは自分の中では大きな成長だと思っています。
というわけでまずはメリットから。
続けた場合に享受しうるメリットとしては、顧客の率直な声を拾えるという点にあります。
価格という正直なフィードバックをもらえたこと
サービスや商品のアンケートで、有用なデータが得られないということはよくありますが、身銭を切る行為については顧客の正直な気持ちが反映されます。
僕らの場合、値決めとアンケートを連動させていて、たとえば「機能性」について、
Q.使用感(テクスチャー)や肌との相性が良かったか?
という設問を用意し、満足度に応じて20円刻みの7段階で(上限120円)上乗せ価格を決定できるようにしています。
こうした設問を3つほど用意しており、すべて最高の評価を選択すると合計360円(120円/問×3項目)が上乗せされます。
値決めと同時に回収される顧客の評価は、その後さらにインタビューを行う際にとても有用でした。
商品の価値と向き合い、考えた上で値決めをしてくださっている。
値段に込めた顧客の正直な思いを僕ら事業者は真摯に受け止め、それをプロダクトに反映していくことができると思っていますし、実際ブランド成長のための道しるべとなっています。
しかしながら、こうしたシステムに頼らずとも顧客の声を集めていける仕組みが構築できるならそれに越したことはありません。つまりUGCの生成を戦略的に行える経営だと思うのですが、優れたブランドはそれをうまく活用し、売り上げを急速に拡大させています。私たちIYVOもこれらブランドに倣った戦略を構築していくことを目標に、「あと値決め」に代わるユーザーの声の収集と拡散を行えるようにしていきたいと思います。
プロモーションの一環として話題性を作ることができたこと
二つ目は認知の獲得です。
アーティストやパフォーマーなどの間では「投げ銭」というかたちで、観客があとからチップを渡す文化が根付いていますが、商品やサービスに対してその形式をとること自体は珍しく、その観点からいくつかのメディアにて取り上げていただく機会がありました。
値決めの際に、先の3つの設問に加えて、投げ銭として最大600円の上乗せができる項目を用意していましたが、およそ回答者の半数がいくらかの応援の投げ銭をしてくださっていました。(感謝!)
個人の活動と紐づきにくい商品やサービスについても投げ銭は成立しうる、という仮説を検証した一つの事例として、実施した意義は大きかったと考えています。
※メディア露出の背景としては、「あと値決め」というシステムを提供してくださっているネットプロテクションズさんが自社サービスのプロモーション活動を実施する中で、その導入事例として弊社ブランドを様々にご紹介くださいました。それによる部分がほぼすべてです。その意味ではネットプロテクションズさんには大変お世話になりました。本当にありがとうございます!mm
ただ一方でややもすれば話題づくりとも捉えられかねない「あと値決め」の導入に頼りきってしまっていたことも否めません。IYVOというメンズコスメブランドの本質的価値は何なのか、真正面から戦いに挑むべきだったと反省しています。
IYVOがブランドを通じてユーザーの皆さんに提供できる価値というものを磨いていく努力をこれからも続けていきたいと思っています。
いきなり定価で購入するのが不安という人のために
さて、後悔した点について、最大の失敗は定価での販売を行っていなかったことです。
これまで「あと値決め」を導入してきた多くの事業者は、初回購入のハードルを下げる目的としていたところが大半でした。
一般的には「初回無料」であったり、赤字覚悟で「○○%オフ」と大幅な値引きを実施したりすることが多いですが、リスクが高く、小規模事業者ではそれに耐えうる資本力を確保することは現実的には厳しいです。
その点、あと値決めのシステムにおいては、
・最低価格を設定しリスクヘッジができる
・フィードバックを回収できる
ため、これまでの手法とは異なる、新たな初回の流入施策の選択肢として大変魅力的であることは間違いありません。
とはいえ...
しかし自分の場合は定価を一切明示せず、ブランドをリリースしてしまった。
別に全くいくらで売っても構わないという意味ではないんです。。
やはり頭の中では「これくらいの値段をつけてくれたらいいな」という希望価格はありました(汗)。
値決めの最低価格を原価に設定していますが、事業をされている方ならわかる通り、製造原価を回収するだけでは事業を継続していくことはできません。
オフィス家賃、水道ガス電気代、通信費、交通費に交際費、融資を受けているならその返済費用、何より自分や従業員への給料も支払わなくてはなりません。
製造原価以外にもこうした費用も売上にて確保しなければ経営は成り立ちません。
そうです、「あと値決め」のみでスタートした私は、小売価格を設定、表示するチャンスを失ってしまいました。
値上げ宣言!
今後「あと値決め」から定価での販売に移行するにあたり、事業計画に基づいて弾き出した価格をサイトに掲げ販売していくわけですが、それは事実上の値上げ宣言です。
ある意味またゼロからのスタートです。
「あの金額だったから購入したのに。」という方もいらっしゃいます。
...すみません。納得してつけた価格より高い値段で販売に踏み切ったらそりゃ困りますよね。ほんとその通りだと思います。本当に本当に申し訳ございません。。
これまでご愛顧いただいたユーザーの皆さんにはご不満を与えてしまうかと思いますが、"売り手-買い手"の関係を超えて、IYVOを温かく見守り応援していただけますと幸いです。
サービスの分かりづらさとオペレーションミスという致命傷
「あと値決め」という体験の真新しさに戸惑うユーザーさんもいらっしゃいました。
購入から支払いまでの流れを十分に説明できていなかった(理解してもらえる導線づくりができていなかった)事業者側の落ち度でありますが、それ故購入行為自体に煩わしい印象を与えてしまったケースが多々ありました。
購入してから支払うまでのやりとりが多く、なんとなくで購入したユーザーからすれば逆にそれが負荷に感じられ、また買いたいという気持ちを削いでしまったように思われます。
またそれに重なる形で事業者側でのオペレーションミスも発生してしまい、それがさらにユーザーさんにとっての不信感につながることもあり、これはブランドにとって大きな損失でした。
この一連の流れをPDCAを回しながら改善していくよりも、馴染みある通常のクレジットカード決済や銀行振込による支払い手段を提供し、別な部分で顧客満足度を高める取り組みを行った方が長期的にはブランドの成長に寄与すると考えました。
完全に顧客に頼ってしまうのは危険
以上、あと値決めを終了するまでの振り返りでした。
価格というのはブランドの輪郭を形成するうえでとても重要な要素です。
性善説に基づき顧客に価格の決定権をゆだねることは間違いではないですが、高品質低価格なものがこれほど溢れている市場においては、本当にシビアな世界。
商材が化粧品という、効果を即実感しにくいものであったということもあり、あと値決めとの相性はあまり良くなかったのかもですが、とにかく導入する前に、
「高く買いたい(買ってもいい)」と思わせるブランドづくり
がしっかりできていることがまずは必要なことだと思いました。
Twitterでもブランド運営を通じて考えたことや学んだことなどをマーケティング、ブランディングの視点から発信していきたいと思います。
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