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「結」ーphase 1~10ー

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”むしょく“のおっさんが絵描きになるまでの物語。 仕事もせずにプラプラ遊び歩く私がひょんな事から「絵を描く仕事」を依頼されて描き上げるまでを下らない文体で書いています。
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2022年4月の記事一覧

「結」 ー Phase 8 ー Uzumakism

「結」 ー Phase 8 ー Uzumakism

ふむ、女神さまは「猫をしているのが辛いにゃら、、、じゃない辛いなら、人間になってみるのも良いかもしれないですね。どう?一度人生と言うものを味わってみては如何かしら?」なんて言っていたけど、どうも人間になったのじゃなくて、人間に取り憑いているだけみたいだ。
この身体の人間の記憶を吾輩が共有出来てていると言う事は、吾輩が私を乗っ取り始めていると言う事だ。吾輩?私?ややこしいニャ〜。

人間が気に入って

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「結」 ー Phase 9 ー Uzumakism

「結」 ー Phase 9 ー Uzumakism

キッシュの美味い酒場の馬屋に繋がれた暴れ馬と仲良くなりたくて、酒場の女将に馬について色々聞いてみた。どうやらこの馬は猫が好きらしい。だけど普通の猫ではなくて“魔力”を持った猫が好きなのだとか。魔力? 何のことやら。
魔法の猫が酒場に来た時は馬が大人しくなるそうな。
「で、その魔法の猫ってどんな猫かニャ? あ、いや猫かな?」と私は尋ねた。

女将曰く誰も見た事がないから、どんな猫かは知らないらしい。

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「結」 ー Phase 10 ー Uzumakism

「結」 ー Phase 10 ー Uzumakism

どうも最近、私は様子が変だ。
時々記憶が飛んでいる。この間なんて酒場の馬屋で知らない内に眠りこけていた、酒を飲んだ訳でもないのに。
目が覚めたら藁の中で猫みたいに丸くなっていたのだ。
手をぺろぺろと舐めて、顔を擦りありもしないヒゲを整える。無意識に猫の様な仕草をしているではないか。私は一体何をしているのだろう…。
そうして、起き上がり藁の山の向こうにいる馬に目をやった。
暴れ馬は今日も大人しい。例

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「結」 ー EPILOGUE ー Uzumakism

「結」 ー EPILOGUE ー Uzumakism

“魔法の猫”を追って随分と走り続けた。
自分でも驚くくらい早く走れる。まるで足が四本になったみたいだ。
いつの間にか私は街と外界を隔てるブロック塀の所まで辿り着いていた。
辺りを見渡したが、白い猫の姿が見当たらない。
どうやら塀を越えてしまったようだ。

この塀の外に私は出た事がない。何でも、外へ出た者は戻って来れないらしい。
誰も戻って来ないから、誰も外の話を知らない。この外は人智の及ぶ世界では

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