ニンジャの話 その27 年金
「ペンション」って何ですか? って聞くと答えでその方の携わっている業種がわかるかもしれません。観光業に携わっている人や一般の方に聞くと「80年代頃に流行った小規模宿泊施設です」と答える方が多いはずです。金融に携わっている方に聞くと「年金です」と答える方が多いでしょう。え?なぜ? ペンションは元々は小規模宿泊事業という意味なのですが、高齢者が退職後、旅行者に部屋貸しをして年金がわりに収入を得ていたことから「年金」の意味で使われるようになったのです。日本ペンション協議会HPには以下のように書いてあります。
これが意味することは
1)高齢者は部屋を貸して収入を得ており宿泊事業で生活できていた
2)高齢者でも運営できるほど参入障壁が低かった
3)高齢者の自宅の空き部屋で営業できるため設備投資が少なくできた
4)過酷な労働ではないため高齢者が運営できた。そのため人件費がかからなかった
ということです。民泊の本質は「年金」であり「高齢者が運営する小規模宿泊事業」なのではないかと私は思いました。もしそうならば秋田で感じていた課題の解決になり得ます。残念なことにインバウンド需要でホテルが足りなくなり若者や事業者が稼ぐ方法としての「民泊」が脚光を浴びバブルを起こしてしまいました。結果、民泊新法という規制が入ってしまい開業、運営の敷居が上がりました。現在の民泊は民間の高齢者が主体となる民泊ではなく、資本を持つ事業者が主体となる「事業者泊」となっています。参入ハードルが上がりすぎてしまい高齢者の参入が難しくなってしまったからです。民泊は高齢者の所得の確保と職業の保護という観点で見た方がいいというのが私の持論です。私が行政ならば民泊を「個人営業のみ」「65歳以上のみ」とむしろ個人の高齢者の収入と職業を保護するような形で行い、若者や事業者の参入規制を考えたと思います。
さて、民泊のことを調べれば調べるほど、母にとって民泊は適していると感じました。両親はお金に困っているわけではありませんが、高齢者である父の介護だけに時間を使う母にはストレスの発散のためにも生きがいと他人とのコミュニケーションが必要だと感じていました。そして両親の住む古民家は訪日客にとって魅力のある宿泊施設になりそうだと思いました。
古民家は愛知県豊田市にあって愛知県から能登半島に伸びる「昇竜道」の上にあります。山の中ですが新東名のインターから10分強の距離、中部国際空港からも1時間です。築150年の家は訪日客にとってアンティークな日本の文化の疑似体験となりそうです。持ち家ですから家賃も発生しません。前回行った断捨離のおかげで部屋は綺麗で気持ちよく宿泊できる状態です。介護はしていますが母はまだ72歳で足腰しっかりですから布団の上げ下げや掃除も楽々こなします。インドからのお客様Anandも宿泊体験が特別なものだったと太鼓判を押してくれています。
両親がついぞなし得なかった古民家で稼ぐという夢。もしかしたら民泊で実現できるかもしれない。そう思った私は、母に電話します。
「お母さん、民泊って知ってる?」
さて、ここから苦難の説得の道が始まりました。
続く
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