迷惑のかけあいが~2022年6月に読んだ本から
読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしている。
6月に読んだ本の中から、印象に残った本3冊。
1 オオルリ流星群 伊予原新
スイコこと山際彗子が帰ってきた。この街に天文台を建てるという。協力するのは、28年前、高校の文化祭でいっしょに空き缶を使った「オオルリ タペストリー」を作った仲間たち。
みんな、大変なことも たくさんある中での天文台作り。そして、当時はわからなかったできごとの 真相も明らかになっていく。
心配、不満、あきらめ・・・いろいろある45才の日常の中、スイコの天文台作りを手伝うかつての仲間たち。それは、スイコのためだけじゃなく自分のためでもある。
当時のできごとの 衝撃的とも言える真相も明らかになる。
いろいろあっても、また前を向いて歩いていこう という力を得ているのが 読後感がよかった大きな理由。特に引きこもりになってしまった友人の最後のシーンは、「一歩ふみだせたよね」と安堵感を覚えた。
伊与原新さんの 作品の良さを あらためて感じた一冊
2 エレジーは流れない 三浦しをん
高2の怜には母親が2人いる。 餅湯温泉商店街で土産物屋を営む寿絵と、女社長の伊都子。どちらが本当の母親か、そして父親が誰か 怜は知らないし、知りたくもない。
個性豊かな友人たちに 振り回されたり、進路をきめなければならなかったり、悩みの多い日々だ。そんな中、餅湯博物館から 縄文式土器が盗まれるという事件が起こる。さらに、目の前に突然父親が現れる。
「まわりの人たちを 思いやる怜は いい子だなあ。でも、本人は 苦しいだろうなあ」と思いながら 読み進めた。
だから、出生の秘密が明らかになったときの、怜の涙には 思わずもらい泣き。
マイナスのイメージが強い「迷惑」。でも、このお話では、「人と人とのつながり」「助け合い」という面もあるということに 気がつかせてくれた。
最後の2行で、「エレジー=哀しい歌」だということを思い出した。そうか、だから「エレジーは流れない」なのか!
3 すてきなタータンチェック(たくさんのふしぎ傑作集) 奥田実紀
小さい頃から好きだった「チェック柄」。奥田実紀さんは、「赤毛のアン」に憧れて留学したプリンスエドワード島で「プリンスエドワード島タータン」に出会い、その歴史やなりたちを調べていく。
チェック柄は、私も好きな模様だが、どれが、タータン・チェックで、普通のチェックとどこが違うのか 全く知らなかった。
タータン柄の説明だけにとどまらず、イギリスの正式名称や歴史、スコットランドの民族衣装だったタータン柄が なぜ海外にもひろがっていったのか、布地のいろいろな折り方、タータンには公的な登録制度があることなど、40ページほどの中にタータン・チェックにかかわる情報がぎっしり詰まっている一冊。
奥田実紀さんが、小さな頃から好きだったことを、こうして一冊の本を出版するまでにつなげていることには、ただただ感心してしまう。
私の好きだったことはなんだろう。そしてそれが今の生活にどうつながっているのだろうとしばし自分の人生を振り返ってしまった。
6月10日にNHKで放送された「ドキュメント72時間『絵本専門店 わたしの物語」。
東京神田神保町にある絵本専門店「ブックハウスカフェ」の72時間を追った番組だ。
たくさん絵本や児童書がならんでいる店内の映像に「どんな本が並んでいるんだろう」と、画面を凝視してしまった。
さらに、読んで欲しい本を父親にわたしている小さい女の子、子どもたちのためにいっしょうけんめい絵本を選んでいる保育士さん、店内の椅子にすわって真剣に本を読んでいる男の子 など、絵本を楽しむ人たちの 幸せそうな様子にうっとりした私だった。