【まいぶっく29】稲妻のように泳ぐ~カッパのぬけがら
泳ぐのは、苦手である。
背泳ぎは、顔に水がかかるのが いやだし、平泳ぎは、一生懸命 手足を動かしても、少しも前に進まない。
クロールにいたっては、息つぎをすればするほど 苦しくなる。なぜ?
それらを 克服できないまま、もう泳ぐこともなくなった。
この本の主人公のゲンタは、カッパになって「魚のように」泳ぐ。その速さは「みどりいろの いなずま に なった気分」になるほど。 うらやましいこと、このうえない。
おはなしは、川に落ちたゲンタが、カッパのあみに つかまるところから 始まる。
「カッパにひっぱられた人間が どうなるか」を伝えようとするカッパ。しかし、現代っ子のゲンタは、「おそろしい」とか「相撲が強い」とか「尻こ玉をとってしまう。」とかいう カッパの基礎知識 が 全くなくて、カッパをがっかりさせる。
カッパは、自分が脱皮したときの ぬけがら をゲンタに渡す。肌にぴったりすいついたぬけがらは「ダイバーズスーツみたい」。ゲンタは、何とカッパになり、すいすいと泳げるようになる。
へええ カッパのぬけがらを着ると、カッパになれるんだ。
思わず 声に出したくなるほど 嬉しくなった私。
水の底でのお月見と酒盛り、川岸での相撲、川下り・・・
2匹のカッパは楽しく過ごす。
しかし、台風の後に流れてきた 人間の持ち物を見た ゲンタは・・
絵本や童話、翻訳など たくさんの作品のある なかがわちひろさん。
この本は、絵も なかがわさんが 描かれている。ひょうきんでとぼけた感じ、ちょっぴり怖い感じ、しょんぼりした感じ、いろいろな表情のカッパが楽しい。
カッパと暮らしていた水の中の世界と 地上の世界で ページの色が違うのも おもしろいところ。
最初に読んだのは、たぶん20年程前。今 読み返してみても、やっぱりおもしろい。でも、「たぶん この世で最後のカッパ」という悲しさも感じてしまったお話だった。
読んでいただき ありがとうございました。