【まいぶっく27】「きっちり生活」が くずれても ~ きっちり・しとーるさん
「ああ、私もおんなじだ~」
ほんわかとした気分で読んでいた この本「きっちり・しとーるさん」。
でも 途中からそのストーリーが、ざくっと心にささってきた。
退職して ずっと家にいる生活を 始めた時、一つ これだけは絶対にやろう と思ったことがある。それは、
「朝、起きること」
朝、起きて 身支度をして 食事をとって・・・・と、仕事をしていた時と同じように 朝をすごしたいと思ったのだ。
生来 ずぼらな性格。仕事に行かなくていい「毎日が日曜日」となったら・・・いつまでも寝ていて、顔も洗わず、もちろん化粧もせず、下手したら一日パジャマ・・・・なんて生活は、絶対避けたかった。
幸い、たっぷり 年をとっている私。苦労しなくとも、朝は早く目が覚め、夜は早く眠くなるので、なんとか「一日パジャマ」の生活にはならずにすんだ。
4年目の今となっては、朝起きて、食事して 掃除して 買い物して 畑仕事して 図書館に行って テレビ見て、という 生活のパターンが だいたい決まっている。
ところが、ところがだ。
「突発的に そのパターンを崩されると 違和感や 居心地の悪さを ものすごく感じる」
と いうことを しばしば経験するようになった。
事前に、「この日は用事があって、いつもと違う生活パターンになる」と わかっていることなら大丈夫。
でも、突発的な予定の変更、たとえば、
突然お客さんがきて、食事の支度が遅れる・・・・いらいら。
突然「買い物 行きたいから 車だして」と頼まれる・・・「なんで、早く言わないの!!」と、怒る。
怒りながら、「私って、こんなに 融通がきかなかったっけ?」と びっくりしてしまった。
きっちりしとーるさんは、図書館におつとめ。その生活は、名前の通り、「きっちり」している。
朝起きる時間も、朝ご飯のメニューも 毎日同じ。家を出る時間も、町の人の時計代わりになるほど 毎日同じ。
もちろん 仕事もきっちりしていて、本の知識もばっちり。
でも、でも、実は、みんなから ちょっとこわいと 思われている。
それは、本をばらまいたり、なかなか図書カードが見つからなくて もたもたしている人を見ると、ぴくっと まゆをあげて ためいきをつくから。
「小学校1・2年から」と表記ありの、ほんわかした文と絵の本なのだけど、自分のペース、自分の価値観から はずれているものを 許容できない きっちり・しとーるさんが、そこにいる。
・・・ああ、私も同じなのかもしれない。自分の生活パターン・自分のやり方が絶対で、それから はみ出る物を 受け入れづらくなっているよ。
でも そんなしとーるさんが、雪の日、子ねこをひろってしまって さあたいへん。
きたないし、暴れるし、仕事は増えるし、いつものきっちり生活がくずれてしまいます。
そんな しとーるさんに図書館のみんなが・・・
いつものパターンからはずれたからこそ、「自分にできないことがある」 ということに気づき、子ねこのぬくもりや 他の人のやさしさにも出会えた きっちり・しとーるさん。
私も、自分の生活パターンに固執せず、「変更、脱線、おおいに結構」という気持ちで ゆったり暮らしていきたい。せっかく 時間に余裕がある生活になったんだから なおさらね。
ちょっと、我が身を省みる機会をくれた本だった。
きっちり・しとーるさん
おのりえん 作・絵
こぐま社 2018年