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マイクロプラスチックによる海洋汚染防止のために


1. はじめに

 海洋汚染は、現代の環境問題の中でも特に深刻な問題の一つです。海洋汚染の影響は生態系だけでなく、人類の健康から経済へと広範囲に及んでいます。ここでは、特に海洋のマイクロプラスチック汚染が海洋生物、特に魚介類に与える影響、そしてその結果として人類の健康に及ぼす潜在的なリスクについて考えてみたいと思います。

2. マイクロプラスチックの定義と特性

 マイクロプラスチックとは、直径5mm以下のプラスチック粒子を指します。これらの粒子は一次的マイクロプラスチック(製品の一部として初めから小さい粒子)と二次的マイクロプラスチック(大きなプラスチックが劣化して小さくなったもの)の二種類に分類されます[1]。

3. 海洋生物への影響

3.1 マイクロプラスチックの海洋生物への蓄積

 複数の研究が、海洋生物の体内、特に消化器官にマイクロプラスチックが蓄積されることを示しています。例えば、Lusherら(2013)の研究は、北東大西洋で捕獲された魚の36.5%の消化管からマイクロプラスチックが検出されたと報告しています[2]。また、Rochmanら(2015)は、インドネシアとカリフォルニア州で販売されている魚介類の約25%からプラスチックや繊維が検出されたと報告しています[3]。

3.2 健康への潜在的影響

 マイクロプラスチックはその表面に有害な化学物質を吸着する特性があり、これが消化器官を通じて体内に取り込まれる可能性があります。これにより、人体に炎症反応や酸化ストレス、内分泌かく乱作用を引き起こす可能性が指摘されています[5][6]。
 ここでは海洋汚染の話をしていますが、[6]は空中浮遊物にもマイクロプラスチックとプラスチックの添加剤が含まれ、それが喘息、アレルギーにも関係すると示唆しています。

4. 生態系への影響

 マイクロプラスチックは食物連鎖を通じて海洋生態系全体に影響を与えます。例えば、プランクトンや小魚がマイクロプラスチックを摂取し、大魚へと連鎖的に蓄積されることで、海洋生物、そして魚介類を食する人間や動物(家畜の飼料にも含まれるおそれがある)の生態系全体に広がることが報告されています[4]。

5. 経済的影響

5.1 漁業への影響

 海洋汚染は漁業に直接的な影響を与えます。マイクロプラスチックが蓄積された魚介類は市場価値が低下し、漁業収入が減少する恐れがあります。
(日本では海洋マイクロプラスチックの研究は少ないようです。海洋探査、に莫大な資金がかかるし、近海調査では漁業関係者との利害関係もあったりするためか研究が難しそうです。日本で危機感を訴える文献は[7]です)

5.2 観光業への影響

 海洋の美観が損なわれることで観光業にも悪影響が及びます。プラスチックごみで汚染されたビーチは観光客にとって魅力的ではなくなり、観光収入が減少する恐れがあります。さらに、日本食として提供される魚介類が健康によくないとのうわさが広がると、日本への旅行者の減少の恐れもあります。

5.3 プラスチック製品製造業

  プラスチック製品の人体と環境への影響が問題視され、消費者や規制当局からの圧力が増加します。リサイクル可能な素材の開発や、生分解性プラスチックの利用が推進される一方で、従来のプラスチック製品の需要が減少していくことも考えられます。

5.4 飲料・食品包装業

 プラスチックが飲料や食品の包装に使用されることで、消費者がこれらの製品を避ける傾向が強まります。その結果、代替素材への移行や、新たな包装技術の開発が求められ、これに伴うコスト増加や技術革新が必要となります。

6. 今、何をすべきか

6.1 魚介類の摂取

 魚介類、特に魚介の内臓の摂取を控えめにし、バランスの取れた(同じ魚介類だけでなく、肉などのたんぱく源による)食生活を心がけることが推奨されます。魚介類の内臓にはマイクロプラスチックが蓄積されやすいためです。

6.2 プラスチック使用量の削減

 使い捨てプラスチック製品の使用を避け、リユース可能な製品を選択し、適切なリサイクルを実践することが重要です。

6.3 環境教育と啓発

 マイクロプラスチック問題について学び、周囲に伝えることが必要です。また、地域のクリーンアップ活動に参加し、環境保護の意識を高めることも大切です。

6.4 政策支援

 プラスチック規制を支持する政策や法案を支援し、環境に配慮した企業の製品を選択することが求められます。

6.5 研究とビジネス支援

 マイクロプラスチックの影響に関する研究を支援する団体に寄付することも、問題解決の一助となります。さらにマイクロプラスチック削減のためのビジネスを行う企業を応援することもよいことであると思います。

海洋プラスチック動態研究グループ<海洋生物環境影響研究センター<JAMSTEC
マイクロプラスチックが海の生き物、人体に与える影響は? | 日本財団ジャーナル (nippon-foundation.or.jp)

マイクロプラスチック問題への対策方法と企業事例13選を紹介 | SDGsコンパス (sdgs-compass.jp)
プラスチック削減に向けた、大手企業10社のCSR事例 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

他にもたくさんあると思います。

7. まとめ

 海洋のマイクロプラスチック汚染は、人類の健康、生態系、経済に広範な影響を及ぼす深刻な問題です。今、行動しないと、つけはいつかめぐってきます。個人の意識向上のうえ、社会全体が協力してこの問題に取り組むことが不可欠です。さらに、持続可能な未来のために、より多くの研究と教育が必要と考えます。

8.備考

・すごいストローが。。マイクロプラスチックを浄化するらしいのです。
PFASや重金属も除去、スマートな「ストロー型浄水器」が成し遂げたこと (msn.com)
・ペットボトルの水ではなく、水道水を飲む[8]。できれば、浄水してから。
・掃除が大切。家にはプラスチック製品が多いため、こまめに掃除することで浮遊するマイクロプラスチックを減らすことができるそうです[8]。

参考文献

  1. Eriksen, M., et al. (2014). "Plastic Pollution in the World's Oceans: More than 5 Trillion Plastic Pieces Weighing over 250,000 Tons Afloat at Sea". PLOS ONE, 9(12): e111913.

  2. Lusher, A. L., et al. (2013). "Microplastic pollution in the Northeast Atlantic Ocean: Validated and opportunistic sampling". Marine Pollution Bulletin, 67(1-2), 94-99.

  3. Rochman, C. M., et al. (2015). "Anthropogenic debris in seafood: Plastic debris and fibers from textiles in fish and bivalves sold for human consumption". Scientific Reports, 5, 14340.

  4. Avio, C. G., et al. (2015). "Pollutants bioavailability and toxicological risk from microplastics to marine mussels". Environmental Pollution, 198, 211-222.

  5. Prata, J. C., et al. (2020). "Environmental exposure to microplastics: An overview on possible human health effects". Science of The Total Environment, 702, 134455.

  6. Campanale, C., et al. (2020). "A Detailed Review Study on Potential Effects of Microplastics and Additives of Concern on Human Health". International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(4), 1212.

  7. 五十嵐敏郎(Mar. 2019)"マイクロプラスチックの実態と解決案".マテリアルライフ学会誌.31 [1] 1-7

  8. マイクロプラスチックをなるべく摂取しない方法3つ | ライフハッカー・ジャパン (lifehacker.jp)

変更履歴

Rev.1.0  2024.7.7 初版


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