SNSは、敵対的コミュニケーションに「倫理的交戦規定」を課せるか?(2)
本noteの流れは上記を参照。
まず、比喩的に流れを確認。SNSにおいて発生する、言論による非対称戦争に際し、軍事介入することなしに、戦争の被害を減らしたい。使えるのは、国境なき医師団を派遣し、炊き出し、各種インフラ整備部隊といった非軍事オプションだけだ。
つまり、言論の応酬、コンフリクトがあったとき、その内容やシグナリングを直接変更させることなしに、行政支援、金銭支援などでアプローチを試みる。
使えるのはだいたい以下のオプションだ。
1.名誉毀損訴訟費用の補助
2.SLAP訴訟対策の補助
3.医療支援への緊急接続
4.その他行政支援への接続
順に軽く解説していく。
まず最初の二つ、名誉毀損訴訟に関わる補助だ。これはコスト論的には相当厳しいのだが、一応理念だけ述べる。
1.訴訟費用の補助
これは、文字通りである。インターネット上の発言に対する訴訟などは、開示手続きを含め、コストが大きく、払えない人は泣き寝入りである。ゆえに、SNS上で炎上し、損害を被ったなど、特定の条件を満たした人が、SNS上の何らかの発言者に対して訴訟を行いたいとき、SNS運営会社はそれを金銭的に補助するべきだ、というロジックは当然可能だろう。これは批判の禁止ではなく、法の裁きへの接続支援なので、直接介入禁止ルールには違反しない 。だが、問題はあるので、次で緩和する。
2. SLAP訴訟対策の補助
上記だけを行うと、常に大企業、政治家、有名人などの立場が強く擁護され、危険だ。例えば内部告発、政治批判、その他公共の福祉のための批判が抑制される。また、各種コンフリクト発生時の言論でも、常にこれら強者の発言がより強くなってしまう。
そこで、SNS上の発言により訴訟されてしまった人に対しても、その弁護費用もSNS側が一部負担すべきだ。これは無茶なロジックだと言えるだろうか?私は法曹などではないから明確なことは言えないが、SNS上の発言による被害はSNS運営会社にも一部責任がある、という論法でそもそもSNS規制論がある以上、「加害者側」が払わされる分のコストも負担すべきだというのも延長線上として可能だろう。
3.医療支援への緊急接続
これはすでに多少は行われている。例えばSNSで「自殺」とか「メンヘラ」と検索すると、精神疾患関連の相談窓口が案内される場合は多い。だが残念ながら方向性がズレている。
重要なのは、SNSと関係ないパーソナリティに起因する自殺・疾患を減らすことではない。SNS上の言論合戦に直接起因する自殺・疾患を減らすことだ。
だから例えば、誰かが特に炎上するイベントが発生した場合、SNSはそれを検知して、そのアカウントに対し、オンライン上でのカウンセリングなどの緊急医療支援、その後の通院などの医療支援への接続補助などを行うべきだろう。
関連するベンチャーやNPOはすでに試みられている。あとはSNSと直接連携すれば可能だ。
4.その他行政支援への接続
これは、例えば労働支援、生活保護などの申請主義的システムへの接続支援だ。
これが言論上の安全性となぜ関係するのか?そもそも、悪質な攻撃的言論を行うようなパーソナリティの持ち主は、医療、医療以外の公的支援サービスを必要としているのに、そこからこぼれ落ちている人間が多いはずだ。(これが真実かどうかは皆さんが判断して頂きたい。)
だが残念ながら、自らの加害性を自覚して、自分から治療を受けるような人間はそもそもそんなことにはならないし、第三者が無理やり医療を受けさせる、またはそう誘導するのは人権侵害だ。
よって医療支援以外の、純粋に本人の得になる行政支援へとまず接続し、その結果、余裕を取り戻した後に自発的に医療支援へと向かうことを期待すべきだろう。これは十分可能だ。
そもそもSNS上で上記を有償・条件付き無償で行っている団体はあるので、あとはそこに丸投げするシステムさえできれば、コスト論的にもそこまで問題はない、はずだ。公的サービスへの二次仲介にすぎない。
いかがだろうか。もう少し具体的に詰めていきたいが、大体はこの4つを組み込んだSNSを求めていくのが最初のステップだろう。
コスト論的に明らかに厳しいのは1と2だ。逆に3と4は十分可能だろう。そこまでオリジナルな発想でもないし、実装の詳細は別にしても、例えばNPOやベンチャーなどがこれだけをツイッター社への売り込み、提案として行えば通るレベルだと個人的には考えている。ここはもう少し具体化したい。
1と2をどうやって何らかのSNSへ実装可能にするか、は中々考えがいのある論点だ。とりあえずこの当たりで一度noteを切る。
次回から、詳細について検討していく。