見出し画像

20240419 どうもどうも河野です。

(本日主宰の松本が取材中のため、代わりに河野竜平がお届けします。)

***

どうもどうも河野です。
これは今まで生きてきた中で最も印象に残る思い出のお話です。

時は2005年、中学2年生。
その日は期末試験の最終日。
河野少年は午前中のテストを難なく乗り切り午後に差し掛かる。
その日の最後、つまり期末試験最後の試験科目は家庭科。
「正しいまつり縫いの選択」や「鮭のムニエルの調理方法」などの問題が出る。授業を聞いていればスラスラ解ける問題ばかりな上に比較的得意な分野だったので筆がどんどん進む河野少年。
テストの制限時間が60分なのに対して15分ほどで全てを解き終えた。

河野少年すごい!

難なく解き終えた安堵、長かった期末テストを終えたという達成感が頭を埋め尽くす。と共に給食を食べた直後だったこともあり眠気に襲われた。ざっと見直しをしても問題がなさそうだったので机に突っ伏して仮眠を取ることにする。結局テスト終了のチャイムが鳴るまで眠っていた。出席番号5番だった河野少年は席順が1列目の最後尾だったため、その列の解答用紙を集める任務があった。目覚めたばかりの目を無理やりこじ開けてみんなの解答用紙を回収しようと立ち上がった。
しかしその瞬間あることに気がついた。ほっぺたがびちゃびちゃに濡れていたのである。このような現象が起きる時の答えは明白、ヨダレである。河野少年にとって寝ている間に口が開きヨダレが出てしまうことはよくあることだったが、驚いたのはその量だった。机に置かれた自分の解答用紙に目を落とした河野少年はこう思った。

「琵琶湖か?」

机の半分ほどにまで広がらんとする広大な湖に一瞬心を奪われかけたがすぐに現実に引き戻された。自分には任務がある。幸運にも自分が他の4人の答案用紙を回収すればいいだけなので誰にも見られることなく琵琶湖を滑り込ませることは容易であった。

数日後、生徒たちが一生懸命に取り組んだテストが採点され各々の実力を再認識する日がやってきた。ある生徒は喜び、またある生徒は涙を飲んだ。河野少年も漏れることなくテストの結果に一喜一憂していた。
当然、家庭科のテストも採点される。いくらヨダレだろうとこれだけの時間が経っていれば流石に乾いているだろうと思い、河野少年はたかを括っていた。出席番号順に名前を呼ばれて教卓に鎮座している教師の前まで自ら取りに行く。1番目、2番目、3番目の生徒が自分の解答用紙を手に取り席に戻る。そして4番目の生徒が呼ばれて自分の解答用紙を見てこう叫んだ。

「なんか茶色いんだけど!」

その言葉を聞いた瞬間、河野少年の頭脳は光よりも速い速度で回転し、当時のことを思い返していた。
家庭科のテストを受ける直前に給食でカレーを食べていたことを...。
当時の河野少年には給食を食べた後に歯を磨く習慣がなかった。なぜなら1秒でも早く外に出てみんなとドッヂボールをしたかったからだ。
そして名前が呼ばれた河野少年。
ざわめくクラスの中をドギマギしながら進んでいく。どんな第一声をあげれば怪しまれないだろうと考えながら1歩、また1歩と重い足を前に出す。驚くほど茶色に変色した答案用紙を受け取り絞り出した言葉は

「エー!俺ノモ茶色インダケドー!」

頑張った方だと思う。
幸い目の前で起こった不思議な現象にざわめく友達のおかげでうまく紛れていた。
気がする。
テストの点数は96点だった。
しかしそんな事はどうでもよかった。
急いで自分の席に戻り96点をカバンの中に放り込んだ。

茶色になった答案用紙、すでに真っ白になっていた脳内、自分でもわかるほどに赤くなっていたであろう顔面。
この3色のコントラストは今でもあの時の河野少年のまま僕の心の中に渦巻いている。

河野竜平

土浦合宿より 写真:鈴木大倫

【所属事務所プロフィールページ】
https://mmp.moo.jp/mmp-actor/%e6%b2%b3%e9%87%8e%e3%80%80%e7%ab%9c%e5%b9%b3
【X】
https://twitter.com/Ryohei_Franky

*****
◆本日もご清覧頂きありがとうございます。もしなにかしら興味深く感じていただけたら、ハートをタップして頂けると毎日書き続けるはげみになります!
◆私が主宰する劇団、平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co . では向こう10年の目標を支えて頂くためのメンバーシップ「かえるのおたま」(月額500円)をはじめました。
メンバーシップ限定のコンテンツも多数お届け予定です。ワンコインでぜひ、新宿から世界へと繋がる私たちの演劇活動を応援していただければ幸いです。
→詳しくはこちらから。https://note.com/hiraoyogihonten/n/n04f50b3d02ce
◆コメント欄も開放しています。気になることやご感想、ご質問などありましたらお気軽にコメント頂けると、とても励みになります。どうぞご自由にご利用ください。

ここから先は

0字

かえるのおたま

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?