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その男中老につき、凶暴。

中老の男(70)が今日もまた吠えた。

今必要なのは商業誌ではなく同人誌なんだ!
読者のために有益な情報(だと編集側が勝手に思い込んでるもの)を集めるんじゃなくて、ある強い想いがあって仲間を集めたい人たち、ムーブメントを起こしたい人たちの投稿雑誌を今こそ創刊するぞ!

…うむ。なかなか良い話ではないか。

台割り(雑誌のページ構成)の話になったので、じゃあ創刊のメッセージとコンセプトを載せなきゃねって言ったら「それはいらない。いきなり始める。誌面でコンセプトは説明しない」と言い出した。

まじで!?それって成立するのか??

すると男は「いろいろ考えたんだけどさー、記事で勝負したい。前口上なし、コンセプトの説明なしで、すべてのページの原稿全体でそれを表現したい」と言う。

な、なるほど。
カッコいいぜ…あいかわらずの神センスだ。とても70歳とは思えない。こういうことを言うから、僕はこの人の弟子になったのだ、と改めて尊敬した。師匠よ、それをやる様を見せてくれるのか、さすがだぜ!!

すると僕のことを弟子と呼ぶその男はこう言った。

「頑張れ、平野編集長!これが出来たら凄いぞ!完成が楽しみだ!」

ちょ!おいおいおい…お前がやるんじゃないのかよ!そのコンセプトを具現化するのは僕の役目なのかよ!

全ての執筆者や投稿者に「体現せよ」と言い続け、説明しつづけ、彼ら自身からその「熱」が出てきていることを見極め、時に励まし、時に裏切り、投稿者と読者を心底信じて関係をつくりあげていくのか。それを僕がやるのか。

あーめんどくさー!!
本当にそれが出来たら、そりゃ伝説の雑誌になるに決まってるだろ!

…なるほど、そうか。
だからこそやるしかないということなのか!?

それにしても、この前劇団を立ち上げたばかりじゃねえか。なんで今度は編集部を立ち上げることになってるんだよ。いくらなんでもハードル上げすぎだし暴れすぎだろ。僕が何度も「新しい仕事と収入を見つけないといけないんです!」と説明してるのに、金にならなそうな話ばかりしやがって、聞く耳を持ってないのか?

この中老の男、師匠なのか疫病神なのか、今はまだ判断がつかない。ひとつだけハッキリしてるのは、僕はこいつに振り回され続けているということ!やっぱ疫病神か!

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