「ある行旅死亡人の物語」―孤独死から解き明かされる身元不明の女性の半生と、自分の人生について考える時間
ノンフィクション、「ある行旅死亡人の物語」を手に取りました。ある孤独死をした身元不明の女性の人生に焦点を当てたこの作品は、彼女が残したわずかな痕跡から、記者たちがどうやって彼女の身元と半生を解き明かしていったのかを描いています。興味をお持ちの方は、ネット上で公開されている原稿もご一読いただけます。
(無料で全文読めました)↓
警察も探偵も、彼女の身元を明らかに出来きませんでした。なぜなら、彼女は住民登録がされておらず、銀行の通帳を作成したときに残るはずの資料も何故かなく、歯の治療は健康保険を利用しない闇医者に通院していたのです。
他にも、謎はありました。
彼女の自宅金庫には約3400万円が眠っていましたが、彼女自身は右手の指をすべて欠損しており、なぜかそれに対する労災年金の受け取りを拒否していました。謎に包まれた彼女の過去に、二人の記者が、その身元と半生を解き明かしていく過程が、本作には綴られています。
人の数だけ人生がある。人生は選択の連続だともいう。
確かにその通りで、この本を読んでいて身元不明だった千津子さんの人生を何度も想像してしまいました。本を読み進めていくうちに、彼女が人生のあるときに選択した「何か」によって、彼女は社会とのつながりを切って生活し続けたように思えました。そうし続けなければならなかったのかもしれません。そして、そのまま亡くなられた。
彼女が社会から隠れるようにして生きることと引き換えに得たものとは何だったのだろう。後悔はなかったのだろうか。
ぬいぐるみに対して子供のように服を着せかえたり、玩具を買ったあげたりして大事にしていた写真が残されていました。一方で、過去の友人からは男の子がいると聞いていたと証言があったり。
ノンフィクションだから、小説のように謎のすべてが明らかになることはありません。それでも残された事実から、彼女の人生に思いをはせると、勝手なのですが色々と想像せずにはいられませんでした。とてもきれいな人で、社交的だったという彼女の人生の後半を想うと、複雑な感情になります。それはどこかで、自分の人生をも振り返り、「自分のこれまでにしてきた人生の選択」について考えさせられるからかもしれません。
作中に出てくる台詞「人生とは何かを、かんがえさせられる出来事です」が心に突き刺さり、そのままになっています。
以前、ご年配の方とお話をしていて、「Enjoy your life.」と言っていただけたことがありました。ドストレートなんだけれども、確かにそうだなと妙にこの言葉を受け入れられた記憶があります。どんな状況にあっても楽しむことを忘れずにいたいです。
あらすじ🗒️📌
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