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老いない時間を過ごし続けたら、どんなことを感じ、思うようになるだろう:ケン・リュウ「アーク(円弧)」読書感想

 ケン・リュウ著「紙の動物園」という短編集の中にある「アーク(円弧)」という作品を再読した。

 この物語は、新しい命、つまり自分の子供と向き合うことを放棄した女性が主人公だ。彼女は自分が生きるために、死体を扱う仕事をした。その後、遺伝子に対する治療などを通して、永遠の命を持つことになる。
 老いることがなくなった彼女が、長い長い時間の中で命についてどのように関わってきたのかを描いている。そして彼女が生きること、命について最終的に出した結論はどんなものだったのか。

 初回に読んだ時より再読の今回の方が、よりこの物語のテーマ、言いたいことが胸の奥まで入ってきたように思えた。主人公の女性の気持ちに焦点を当てて読むことができたからかもしれない。

 人間の寿命は、科学技術の進歩によって、どんどん長くなっていくのかもしれない。命の長ささえ、裕福な人たちならお金で買える時代がやってくるのかもしれない。 
 老いない時、私たちは人生を、その時間を、どのように考えて過ごすだろうか。はじめの百年は楽しいかもしれない。次の百年は退屈だろうか。どんどん時間が過ぎていく。その中で生きる事を放棄したくなる時はあるのだろうか。
 読み終わったあと、私たちの生きる時間が有限であることについて考えさせられていた。


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