大切な誰かとの関係を考えさせるミステリー「護られなかった者たちへ」
ミステリー小説「護られなかった者たちへ」を読了した。
後半は一気に読んでしまった。
「どうなってしまうのだろう」
物語にどんどん引きこまれた。
本当に最後までどんでん返しのオチは分からない。読めばきっと、「そうきたか~」と思って作者の中山七里先生に拍手をおくりたくなるはずだ。
ミステリーとして十二分に楽しめる一方で、私は終始、胸がざわついた本だった。自分は、護りたい人たちに何ができるだろうかと深く考えさせられた。
タイトルから想像できるように、この本は「護りたい人を”護れなかった人たち”の物語」だ。
護りたい人がいる。だけど色々な状況や理由で、今それを実際にはどうすることもできないことは誰にでも起こりうる。
私も自分の病気の母親や妹に対して、もう少し援助をしたい、助けたいという気持ちがある。けれど、それは充分にできていないと感じている。仕方がないという理由を並べてみたところで、自分自身を騙すこともできない。
そういう背景が私にもあるから、登場人物たちの「護りたかったのに、護りきれなかった」気持ちを考えると、やりきれない。護りたかった人を失ってしまえば、そのような状況になった直接または間接的な原因を憎み、助けてくれなかった人たちにも腹を立てるだろう。しかし、何よりも自分を責めてしまう。
この物語の登場人物たちが護りたかった人を失った後、どのように生きるのか。読み進めていくうちに、自分自身と彼らの感情を重ね合わせ、何度も涙があふれた。
最後の一文を読み終わり、本を閉じる。
私はまだ護りたい人たちを失っていない。自分にできることは本当に何ひとつないのだろうか。大切な人たちとの関係について、できない理由を並べるのではなく後悔しないように生きよう。そう思わせてくれる物語だった。この小説を読んだあと、私の日常のバイタリティは高くなった。
読めば皆さんの人生の物語とも、作品の物語が共鳴し合うかもしれない。そうすれば、皆さんの中にもきっと何か強い想いが湧き上がってくるにちがいない。
2023年06月18日現在では、kindle unlimitedでも読めるので、おすすめです!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?