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#8 デザイン特別講習と第8回【地域ボードゲームをつくろう!】

仕事がつまってずっと更新できていななかったので、「地域ボードゲームをつくろう!」の「特別デザイン講座」と「第8回ガイダンス」を2回分をまとめて報告します。なお、この終盤の講座はいずれも、学生さんの現状報告を踏まえ双方向に話し合うことが中心になっているので、前半と比べると講座内容が薄くなっています。なので、次の記事では第9回・10回・11回をまとめます。

過去の内容をふくめ、本講座はこちらのマガジンにまとめています。

主催:愛知建築士会 名古屋名南支部
協力:MusaForum(名古屋大学博物館 学生スタッフ団体
協力:いたばしの地域ボードゲーム会

以下にスライドの一部を抜粋しつつ、実施したガイダンス内容をまとめていきます。


1.デザイン特別講座

デザイン特別講座は、地域ボードゲームの制作においてカードやマップなどのビジュアルを作り込む担当者をメインとした、有志参加者向けの講座です。いつもと違って少人数の講座なので、スライドはシンプル構成にして、いくつかのテーマについてゆっくり話し合う内容にしました。

デザインの教本

今回の特別講座の2時間枠でデザインの基礎を伝えきるのは不可能なので、参加希望者にはこちらが選んだデザイン教本を事前購入し、読んでおいてもらいました。

平本久美子さん、よしだゆうこさんの「デザイナーじゃないのに!」を教科書に
まずは内容を振り返って、全体でわかったこと、わかりにくかったことなどを確認

選択したのは漫画形式で読める「デザイナーじゃないのに!」。プロのデザイナーよりは、一般人だけどあるていどのデザイン知識を身に付けたい人にぴったりの一冊です。

ふつうにサクサク読めて、とてもわかりやすい本ですが、読んでもわからない点があるとすれば、「こうすると上手くいく」というノウハウの「理由」の部分。講座内ではそうした部分を掘り下げて、本のノウハウをできるだけ理論づけするよう話し合いました。

そもそも「いいデザイン」とは?

まず最初に伝えたのは、「いいデザイン」を考えるためには「そのビジュアルデザインを通じて何を達成したいのか」をしっかりと意識することが大切だよ、という話題です。

デザインについて考えるならば、まずはこの問いと向きあわなくてはなりません
「どっちがいいデザイン?」という問いかけでは、人による意見が割れやすい。それは「何を達成するために」という目標が設定されていないからだ

日常的なデザインでは「道具=使いやすさ」「印刷物=読みやすさ」のように目的が暗黙化されやすいため、「いい、悪い」という評価だけでもなんとなく合意を得た議論がしやすいかもしれません。

でも、ゲームにおけるコンポーネントのデザインはもっと複雑です。見た目の気持ちよさだけでなく、手に持って使うときの使いやすさ、ときにはゲームデザインの影響で意図した「わかりにくさ」「使いづらさ」すら組み込まれることがあります。

デザインにおいては、まず何を達成しようとしているのか、意識して目的を定めることが大切です。


情報の「構造化」と「優先順位」

情報の構造化と優先順位の話題では、「デザイナーじゃないのに!」にも掲載されているデザインの4原則について、その原則を実現している人間の視覚認知について共有しました。

パックマンみたいな形が3つだけなのに、正三角形が見える(A)
カニッツァの三角形が崩れた絵(B)

まずは構造化の話題。

デザイン4原則の1つ、「整列」に影響するものとしてカニッツァの三角形をとりあげました。錯視図のスライド(A)の次に崩れた絵(B)を見て、ああ、三角形が消えたね、と確認。さらに次ページに進めます。

そこで「今見た3つのパックマンを、その配置と角度まで正確に描けますか?」と問うとどうでしょうか。

AとBに使われている要素はまったく同じであるにも関わらず、Bの配置を正確に思い出すの困難でしょう。これが要素を整列させる大きな役割のひとつ、視覚の情報圧縮です。

私たちは網膜に映る情報を、コンピューター画像のようにドットの集合として認知するのではなく、図形の集合体や色の変化量など複数の情報圧縮をかけ、さらに無意識下での「解釈」を重ねてものを見ています。デザインの4原則にあたるものはほぼ、この視覚認知と関わる情報整理であり、その理屈を理解すれば誰でも適切に使うことができます。

強弱をつけるとはどういうことか(1)
強弱をつけるとはどういうことか(2)
余白は情報が無いのではなく、「この要素とこの要素は距離がある」という情報になる

後半は情報の「優先順位」について。この話題に関連して、僕らの社会全体でよく見られるのは、大切な情報を強めた後に「でもこっちも大切、よく考えたらこっちも大切…」と太字や赤字が増えて、強調表現の軍拡競争が起こってしまうこと。優先順位をしっかり考えた上で、優先度が高い情報を強くすること以上に、優先度が低い情報を弱くすることが大切です。

(参考)使用したスライドなど

ガイダンス当日に使用したスライド全体です。
▼全編スライド

こんな感じで、教本に対して基礎的な情報を強化して押さえてから、個別の質問(色の選び方、書体の選び方、「ダサい」ってなんだとか)について一緒に考えていきました。


2. 第8回のガイダンス

第8回目の「地域ボードゲームをつくろう!」ガイダンスです。9月となり、2つのチームで制作しているゲーム内容がおおまかに定まっていた状態です。各チームの進捗を確かめながら、今後に必要な準備などを確認しました。

今回は各チームとの議論が中心です


サイコロの使い方いろいろ

事前の情報共有で、この時点では両チームともゲームの中心にサイコロの使用がありました。また、ゲーム展開など課題を感じていたようなので、参考事例としていろんなサイコロの使い方をまとめてみました。

サイコロ1つはわかりやすいので省略。「カタン」のように2つ使うことの効果
目が1-3までしかないサイコロも売っているので、そうしたものを使った場合
学生はレーザーカッターを使える環境なので、オリジナルダイスも選択肢に
サイコロは数値だけでなく、アクションの起動条件にする方法も
再投の選択肢を入れることで、ただの運任せではない感覚を得やすい
コントロール感が増えて、プレイヤーが戦略を立てやすくなる
プレイヤー同士の相互作用を高めやすい方法として


各チームの進捗にあわせた議論

各チームのリーダーに進捗を報告してもらい、現在の課題などについて話し合いました。この部分は、今回の記事の下にある音声でも確認できます。

この辺りは、遠隔のガイダンスの難しさがやはりあって、現物を見ながら話せないので、時間内で話を聞きながら、なるべく学生に選択肢を与えながらも、目標とするゲーム体験に近づけるよう話し合いました。

TTB(東海トラベルバス)のチーム

チーム「TTB(東海トラベルバス)」ではボード上の移動、リソースの使い方、プレイヤー間の相互作用などについて話し合いました。


め〜いっぱいのチーム

チーム「め〜いっぱい」では、使用するカードのバランスや盤面移動によるゲーム展開の調整などについて話し合いました。


また、両チームとも、ゲーム会の開催に向けて具体的なイメージを高めるような確認事項を挙げて、どうやっていたいかの議論を行いました。

外的要因で決まる開催条件と、自分たちが決める要素を具体的に挙げてイメージを高める


最後に残り期間(2か月半)のうちの1か月でやるべきことを細かく列挙し、タスクをまとめて共有しました。

おおきく3つのカテゴライズして、やることを整理
参考情報としてデザインに使う道具などの確認。わからないことがあれば質問してね、と促す

実制作が始まると、ゲームデザインとはまた別種の大変さがあります。学生たちが使っている基礎ツールを確認しつつ、参考情報などを提示しました。


今日の話題で大切なこと

形ができてくると、気持ちがアガッてくるし、その感じが大切

期限が近づき、ものづくりが始まると、ワクワクと不安が同時に高まっていきます。ワクワクする気持ちを大切にしながら、多方面の計画を立て、頑張ってほしいなと思いました。


(参考)使用したスライドなど

ガイダンス当日に使用したスライド全体です。
▼全編スライド

▼音声
ガイダンス当日の様子を少しまとめた音声です。スライドによる講座部分の後の、各チームとのやりとりを切り取っています。ご興味があれば、こちらも合わせてどうぞ。


板橋区内に、レーザーカッターや3Dプリンターを使って何かを作ったり届けたりしています。また、そうした道具を使える人を増やしたいという思いで、講座などもちょいちょい開催しています。サポートいただけた場合は、こうした機材費や会場費などに利用させていただきます。