これは見た方がいい!「SAMANSA」で配信中の3本①
「SAMANSA」で配信されているショート映画で、私のオススメを紹介してみます。「あれ?このnoteの記事って案件モノ?」と思われた方、私は声を大にして言いたい。「案件モノだ!」と。
いやいや、案件モノと言いますか、コラボモノなんです。SAMANSAさんから声をかけて頂いたコラボモノなんですが、私にとっては「渡りに船」、「地獄に仏」、「日照りに雨」、「泥酔して二軒目」なのです。
短編映画、ショートフィルム、ショート映画案件のご用命はこちらまで。
私は日本の「短編王」として君臨しているのですが(自分で言っちゃう)、短編界が盛り上がってくれれば、私の社会的地位が相対的に上がるのです。いつまでも離陸しない(長編に行かない)飛行機という汚名を晴らしたいのです。
普通、飛行機って30秒ぐらいで離陸していくと思いますが、私は7時間ぐらい滑走しています。メチャクチャ飛ばない。そのまま飛ばずに目的地に着いちゃう可能性があります。もう翼を無くして線路を走ればいいんですけど、そうなると新幹線になっちゃうんです。人生って難しいですよね。
そんな一人語りはいいとして、オススメ作品を紹介するのです。
『ディスタンス』(監督:Susan Bejar)
これは米アカデミー賞の短編映画部門にノミネートされた作品です。作品の善し悪しは見て頂けたらいいと思いますが、これは日本でも作ることが出来る予算規模の作品なんです。
私たちが映画祭を語る時「アメリカ人が作るショートフィルムは2億円かかってる」とか「ヨーロッパで作られる短編映画は国の金が入っている」などと言います。それは裏を返せば「我々日本人は制作費という面で圧倒的に不利である。だからそういう国の作品と勝負が出来る訳がない。」と言いたいのです。
でも、この『ディスタンス』を見るとそんな言い訳は通用しなくなるのです。そういう意味で恐ろしい作品なんです。
長編映画でもそうですが、ストーリーはリアルタイムに興味を惹き続ける作用を持っていると思いますが、映画を見終わったあとに残るのはストーリーよりもシーンなんですよね。ショート映画はその「印象的なシーン」だけで作品にすることが出来るんです。
ここポイントです。
長編映画は複数のシーンが集まってシークエンスを作り、シークエンスが集まってストーリーになります。これは作るのが大変ですよね。でもショート映画はシークエンスどころかシーンだけで作品として成立するんです。そのお手本の様な作品がこの『ディスタンス』なのです。
この作品を脚本の面から考えてみます。恐らくこの作品を脚本の段階で見た時、これがアカデミー賞にノミネートされると思う人はいないでしょう。プロデューサーは「もっと事件が起きないかな?」とか「冒頭のつかみが弱いね」とか「ラストに大きな驚きを持って来れないかな?」などと言うはずです。
でもこの様な作品が出来たのは、監督の「作りたい」という想いだけで作ったからなんだと思います。いや、私が想像するにですよ。予算を集めるために有名な俳優を使うとか、素人にも分かるベタな刺激を入れたりせずに作れたんだと思います。
作品を見れば分かりますが、この作品の凄さは演出と演技です。演出と演技って、企画書やシナリオの段階では説得材料にならないんですよね。「これのどこが面白いの?」と言われて「いや、演出と演技で良くします。」と言っても通用しないんです。本当は演出と演技こそ、本当に大事なはずなんですけどね。
そういう意味でも、この作品を作ることが出来た監督は幸せだと思います。何の変哲もない地味な企画に協力してくれた人たちがいたんですから。
『野獣』(監督:Jérémy Comte)
これも米アカデミー賞の短編映画部門にノミネートされた作品です。米アカデミー賞って、ものすごい巨大な規模のトーナメントを勝ち上がって来た作品しか残ってないんです。特に短編部門はそうなんです。
「アカデミー賞公認映画祭」という、アカデミー賞に公認された映画祭でグランプリに選ばれると、アカデミー賞の対象作品になることが出来るんですが、アカデミー賞公認映画祭って基本的にすごくレベルが高い映画祭です。例えば、カンヌ映画祭とかベルリン国際映画祭とか、そこでグランプリですよ。日本だとショートショートフィルムフェスティバル&アジアがアカデミー賞公認映画祭になります。
そんなハイレベルな映画ばかりが集められて、何段階ものふるいにかけられてノミネートされるんです。だから、米アカデミー賞の短編部門にノミネートされた作品は全部面白いんです。これは断言できます。映画のテーマやトーンや主張に好き嫌いはあると思いますが、間違いなく見た人を惹きつける作品ばかりなんです。
この『野獣』も凄まじい作品です。
もう冒頭から嫌な気配を感じます。それは小中学生男子から感じる危なっかしさです。よく小中学生男子が登下校する時に「やめろよ!やめろよ!」とか言ってジャレてるのを目にするじゃないですか。もう周りが目に入ってないから、こっちにぶつかって来るし、無防備に道に飛び出したり、あの危なっかしさです。
この監督はものすごい引きのショットを入れて来るので、間違いなく劇場のスクリーンで上映されることを意識して作っています。スマホで見ると人物が点になってしまう程の引きのショットです。スマホで点にしか見えなくても、劇場のスクリーンで見るとそれなりの大きさで見えるんですよね。
「今はスマホで見る人が多いから」と言って、スマホサイズのアングルで作品を作ってしまうと、何かの拍子で劇場のスクリーンで上映された時、人の顔がデカすぎるんです。もうデカすぎて近すぎて暑苦しいんです。
『野獣』は子供が主人公のショート映画ですが、「子供がやらかしてしまう系」のショート映画は上手くいくパターンが多いです。今まで見てきた中でも、「子供がやらかしてしまう系」はいろいろな映画祭にノミネートされています。恐らく、子供ならではの痛々しさと切なさがあり、子供が成長するその瞬間を目の当たりにするから、グッと来るんだと思います。
いや、この『野獣』も含めて、とんでもない事件ばかりが起こりますけどね。
『イモリ会議』(監督:Immanuel Esser & Matthias Sahli)
この『イモリ会議』は凄いです。私が作りたい作品はこういう作品なんです。そして多くの人は置いてけぼりにされてポカーンとしてしまう作品でもあります。私が思うに『イモリ会議』はアート作品です。美術館の中で上映されていてもおかしくありません。アートとは、人の感情を動かすものではなく、人々の固定観念を揺るがせるものの事を指すと思ってます。そういう意味で、この『イモリ会議』はアートなんです。
ちょっとネタバレになってしまいますが、劇中に登場する巨大なイモリは人が操演しています。いや、ネタバレしても意味不明だと思いますので大丈夫かと思いますがw。人が操演しているところを見せてしまうメタ構造によって、私たちは「何を見せられているんだ?」と思います。そう思わせてしまえば作り手の勝ちです。
人間の知能はすごいもので、理解不能だったり意味不明な作品を目の当たりにすると、そこにメタファーが隠されているんじゃないかと推測し始めます。「もしかしたらこのイモリは我々現代人のメタファーなんじゃなかろうか?」とか「ここにメタファーが隠されていると思ってしまう人間の愚かさを炙り出そうとしているんじゃなかろうか?」とか、面倒くさいことを考え始めてしまうのです。
こういう作品は米アカデミー賞のノミネート作品にはなりません。万人受けしないからです。でも私が作りたい作品はこういう作品ですし、同じ様なコンセプトで作品を作って来たので、ものすごく共感してしまいます。
もっと言うならば、世界にはこんな作品を、真面目にお金をかけて作ってしまう人たちがいるんです。そこから大きな勇気をもらいます。「ああ、自分だけじゃなかったんだ…」と。
今回3本の作品をオススメしてみましたが、SAMANSAの中にはまだまだオススメしたい作品がいっぱいあります。絶対に面白い米アカデミー賞のノミネート作品もたくさんありますしね。見放題で月額370円です。チェーン系居酒屋で注文するエイヒレより安いんですから。いや、生ビール1杯より安いんです。ビックリしちゃいます。騙されたと思って月額370円でサブスクしてみてください。恐らく、1〜2本見て元が取れたと思いますから。