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初めての酒米を納めました

こんにちは。ヒライユウキです。
家族の創業地である100年の時が流れる家「日詰平井邸」に残された醸造所の復活を目指しています。

10月12日は何の日?
そうです、私の誕生日です。

31歳を迎えるこの日に、私は素晴らしいプレゼントをいただきました。かつて家業を営んでいた酒蔵を離れ、今春からチャレンジした酒米つくり。収穫した吟ぎんがちゃんをついに納品いたしました。敬愛する岩手の2人の杜氏に自分のお米(処女作)を酒にしてもらう権利。これほど光栄なプレゼントは他に無いでしょう。

時は少し遡り2022年2月。

酒米つくりへの挑戦を決意したものの、私には農業のノウハウも設備も、そもそも農地もありません。販路もない。普通は順番が逆かと思いますが、やりたい、と決めてから動くのは私にとっていつものことです。

意味の分からない無謀な行動に手を差し伸べてくれたのが、雫石町で酒米栽培に取り組む砂壁純也(しゃっかべじゅんや)さんです。砂壁さんには「平井六右衛門」をはじめとする菊の司酒造の原料米を栽培していただいており、兄弟そろってとてもお世話になっていた農家さんです。

農地の確保、機械の貸与、そしてノウハウの提供…普通に考えてありえない、厚い支援をしていただきました。

実は、家族の次にかなり早い段階で「醸造所をもう一度やりたい」話をしたのも砂壁さんです。もちろん、現在も菊の司酒造との取引は継続しており、受け取り方によっては私から離れる選択をするかもしれない、そう思いました。しかし、本音を隠し続けて差し伸べられた手に甘え続けることはできず、私にとっても、砂壁さんにとってもリスクはありましたが黙ってそれを受け入れていただいたことには感謝しかありません。

山田錦に匹敵すると言われる岩手で最上級の酒米「結の香」、私自身が「平井六右衛門」で使っていた「ぎんおとめ」。岩手には3つの酒米がありますが酒米栽培1年目に選んだ品種は「吟ぎんが」でした。

吟ぎんがは、出羽燦々と秋田酒49号を掛け合わせて1999年に誕生した、岩手県初の独自品種の酒米です。美山錦に代わる品種として開発され、寒く夏の短い岩手県でも栽培しやすく、粒に厚みがあり精米しやすいのが特徴。岩手県を象徴するような品種である吟ぎんがを私は酒米農家としての処女作に選びました。

全てが初めての酒米つくり。

ちなみに雫石の環境は稲作にとって、決して恵まれたものではありません。水は冷たいし、山の麓は寒暖差が激しく湿潤。日も短い。蛇口をひねれば水が出るような水口は無くて、底なし沼のような「ぬかった」田んぼ。形も大きさもバラバラ。

この環境で今まで素晴らしい酒米を届けてくれた農家さんを改めて尊敬するとともに、砂壁さんの指導のもと、手取り足取りの酒米栽培に取り組みました。

畔塗りは凸凹だし、田植えもぐにゃぐにゃ曲がっていたけど稲はすくすくと育ち、草刈りだ雨だとあーだこーだやっているうちに、あっという間に収穫の時を迎えました。

今年の梅雨は二段構えで、8月の長雨には面食らいました。穂が出てから米が成熟していく大事な時期に、全然晴れない…本当に刈り取るまで落ち着かない日々を過ごしました。

10月1日。日本酒の日。

運命とも感じるこの日に稲刈りをスタートし、乾燥調整。籾摺りをして袋に詰めるまで、収量は全く分かりません。酒蔵からいただいたオーダーは合わせて100俵…緊張の時。結果は90俵でした。

いくらでも言い訳はできます。でも、米の発注なんてとっくに終わっている2月に(通常は農家の種籾確保に合わせて11月に次年度分をオーダーするものです)私の無茶なお願いに耳を貸し、背中を押してくれた酒蔵さんにどうやって謝ろう…

そう悩んでいる時、いいニュースが飛び込んできました。なんと、検査に出した吟ぎんがが全量1等を獲得したのです。

夜中でしたが、すぐさま酒蔵さんにメッセージを送り、全量1等を獲得したことの報告と、収量が足りなかったことをお詫びしました。

すると、

全量1等おめでとうございます!
初年度の作付けで素晴らしいですね!
収量の件、了解しました。
私達も良い麹が造れるよう、頑張ります(^^)/

連絡ありがとうー!
45俵、承知いたしました
楽しみです☺️
電話お待ちしてます

とのお返事が。とても嬉しかったです。来年の話はまだしていませんが、今度こそきっちりオーダー分そろえてお納めしよう。対策はすでに師匠の砂壁さんと作戦会議中です。

ちなみに今年はやはり夏の長雨の影響で県下非常に厳しいようで、周りの農家さんからは2〜3割減の話も聞きます。この程度の減収で収まっていること自体が1等取れたことよりもかなりの奇跡です。

半年かけて勿体ぶりましたが、私がつくった吟ぎんがを美味しい日本酒に変身させてくれる酒蔵さんをご紹介します。

(株)浜千鳥さま

岩手県釜石市、新里進社長率いる酒蔵です。自然とひとつになった酒造りを掲げ、岩手県内外で高品質な日本酒を広く楽しまれています。奥村康太郎杜氏は埼玉県出身でIターン南部杜氏の経歴を持ち、私が学生時代の頃から良くしていただいていた尊敬する杜氏のひとりです。私の吟ぎんがは「純米酒 浜千鳥」に使用していただく予定です。

赤武酒造(株)さま

岩手県大槌で東日本大震災の津波に被災し、盛岡に移転。古舘秀峰社長と龍之介杜氏の親子二人三脚で岩手を代表する銘柄「AKABU」を醸しています。龍之介杜氏は私と同い年でライバルとして、友として、そして目標として仲良くさせていただいています。私の吟ぎんがは「純米吟醸 AKABU」に使用していただく予定です。

2蔵とも、各種鑑評会・市販酒ともに高い評価と支持を獲得している酒蔵さん。個人的に「吟ぎんがと言えば」思いつくのがこの酒蔵さんで、真っ先にお声かけさせていただきました。そして、それぞれの主力商品に採用していただくことができ、本当に光栄です。

ここからがむしろ本番。納めたお米が他のお米とどのように違うか、日本酒の原料としての結果が見えてきます。これを受けて、来年以降の酒米栽培につなげていく事がとても大切で、私の目標にも繋がってきます。

私の夢は日詰平井邸で醸造所をよみがえらせることです。

私の先祖は伊勢商人のルーツがあり、紫波の地に来て最初に手がけたのが米の倉庫業。その後6代目が酒造創業してからはお米を使い、そして地域の農家さんに蔵へ来ていただいて酒造りをしてきました。400年前からずーっと現在進行形で、私を含めて16人の平井六右衛門は農家さんに生かされてきた家系です。

私が実現したい醸造の生き方とは、地域の人との関わり合いや、土地の中で耳を澄まし、耕し、醸す生き方です。それは工業的な製品として生産し消費されるものではなく、そのストーリーや哲学を表現し共有するものです。

だからヒライは甘い、キレイ事だ。

と言われるかもしれません。でも、商業として出し抜いて束の間の優越感に浸るよりも、私は突き詰めていく、深めていく時間の方がよっぽど好きです。もちろん趣味でやる話ではないので売上や利益は大切ですが、時間をかけてやっていくべき事があると思っています。私はもうすでに一度淘汰された人間ですから、その点では、今さら怖いものはありません。

どんなに非効率でも無謀であろうとも、私は自分で決めた目標に進むだけです。それを応援していただいている家族や全ての方に感謝しています。そして私ができる恩返しとは。それを問う日々を過ごしています。

もう今、すでに、お米を納めることができた喜びや安堵感に勝って、どんなお酒に変身するかということへの興味でいっぱいです。

醸造の魅力に取り憑かれた私にとって、その原料である米をつくることもまた、私の天職なのです。

このnoteは日詰平井邸 醸造所復活に向けた宣言であり、その過程をまとめるものです。ぜひ ♡ で応援いただけますと幸いです。

■日詰平井邸 醸造所復活へのミッション

□ 酒類製造免許を取得せよ
□ 原料を確保せよ
□ 作品と製法を確立せよ
□ パートナー酒販店を集めよ
□ 設備を整備せよ
□ お金を集めなさい

▼日詰平井邸 公式サイト
https://www.hiraroku.com/

▼日詰平井邸 インスタグラム
https://www.instagram.com/hiraitei1921/

▼日詰平井邸 サポーター登録(LINE)
https://lin.ee/GtmZoQH

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