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透明な夜の香り 千草茜

5~6年ぶりくらいに本を読んだ記念の1冊目。
書店で一目惚れしました。


あらすじ

香りは、永遠に記憶される。きみの命が終わるまで。
新・直木賞作家が紡ぎだす、秘密の香り。

「言葉の意味を越えて、嗅覚が際立つという稀有な体験をさせてくれる小説である。」小川洋子(解説より)

元・書店員の一香は、古い洋館の家事手伝いのアルバイトを始める。そこでは調香師の小川朔が、幼馴染の探偵・新城とともに、客の望む「香り」を作っていた。どんな香りでも作り出せる朔のもとには、風変わりな依頼が次々と届けられる。一香は、人並み外れた嗅覚を持つ朔が、それゆえに深い孤独を抱えていることに気が付き──。香りにまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。

集英社

【この先、ネタバレ注意】


現実的なファンタジー

この本って、見出しの通り、描かれている世界は現実感を感じられるのに、ものすごくファンタジーですよね。
舞台が私たちの社会と変わらないのに、異世界のお話みたいな。
でも時折、現実世界の1つの日常で起きた出来事のようにも感じられた不思議な作品でした。

あと、朔の能力であったり、古い洋館であったりが異世界感を出しているのはもちろんなのですが、不倫した女性や危ない美容師とかもその要因の1つではないかなと。
作中の出来事のような事例はなかなか自分の日常では起きないので、現実離れしたように感じました。
この現実感とファンタジー感の塩梅が絶妙です。

愛着と執着の違い

私が一番重く受け取り、唯一自分の経験に落とし込んだのがこのテーマです。
この感想文を書く上で絶対に書くって決めてました。

今までの恋愛経験と照らし合わせてしまうようなテーマだと思います。
私は執着しか経験してないなとか。あの人には執着ではなくて愛着を持っていたなとか。
ちなみに私は執着しか経験していないので、愛着を持つっていうことをしてみたいとこの本を通して思いましたね。

あとは、別れるか別れないかっていう悩みを抱えたことがある人は多いと思うのですが、そういう悩みを抱えたときの解決策の1つにもなるなと。
私は相手に執着しているのか、愛着を持っているのか。
私的には大体執着しているパターンが多いと思いますけどね。

朔みたいな怪しげな雰囲気を持つ人をイメージするときって、さらさらな長髪でアンニュイなのが頭に思い浮かびませんか?
だけど、彼は短髪でしたね。良い意味で違和感がありましたし、よくあるような不思議キャラではないのだなと感じました。
あと、朔については天才特有の違う世界に住んでいて何を考えているか分からない感じが綺麗に描写されていました。

朔と一香

最後まで読んで、2人の関係性を言葉で形容したくない気持ちに襲われました。
最後のほうに友人として訪れると一香が言いましたが、ただの友人と形容するのは違う気がしませんか。私はそう思いました。
また、これから2人はお互いにお互いを必要とする関係になるのでしょうが、恋人にはならないのかなと。ならないというよりかは、恋人と形容するには違う関係になっていくと感じました。
多分これは私の願望が大きいです。絶対。


久しぶりに読む本として、この選択は最高だったと自分をほめたいです。
といってしまうくらいおすすめの本です。
なんといっても言葉が綺麗。分厚くない本ですが、文章を丁寧に読みたくなってしまったので、読み終えるのに時間がかかってしまいました。
香りが読者に伝わるし、読み終えた後もその香りが漂う感じがしました。


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