春霞
海を見ながらのんびりできるくらい
春らしい陽気にようやくなってきた
いつもは店内で飲むコーヒーを
マイボトルでテイクアウトした
気温が急に上がった日だったし
ブラックコーヒーノンアイスで
バスの時間にちょうど間に合い
終点まで久しぶりに乗っていく
前日も遠くに見える山が
白く靄がかかるくらいで
花粉か黄砂かと思ったが
いわゆる「春霞」らしい
風情のない発想ばかりで
一つ一つの季節を丁寧に
感じ取るひとでありたい
と改めて考えたりもする
果たして今日も海は春霞の名残か
真っ青な空と真っ青な海でもなく
淡く靄がかかったような色合いで
それでも十分に温かく久しぶりに
海に突き出た公園のそのまた先端
テイクアウトしてきたコーヒーと
家から持ってきたチョコレートを
かすか潮の香りとともに楽しんだ
思いついた歌を口ずさんでみたが
歌ってみれば少し季節外れだった
次に出たのはメッセージ性のある
泣けてしまう歌なので止めておく
一時間ほどもすれば復路のバスの時間だ
海風で体が冷え切ってしまわないうちに
あれこれやろうとはせずただぼんやりと
海の波音や潮風を感じてちょっと歌って
エネルギーチャージできたような心持ち
もうしばらくすれば空気も
きっぱりした春の色になる
もう少しだけのんびりして
もう少しだけぼんやりして
生き急ぐのは止めておいて
せめてこんな春霞の中では