矛盾
たくさんのルールに縛られて育ったのよ
それらが一般社会で必要なルールなのか
特別なコミュニティだけのルールなのか
それともこの家族の中でのルールなのか
区別がつかないくらいたくさんのルール
とにかくすべて
いけないことは いけないこと
理由はある と母は言ったわ
その理由は教えてくれなかったけれど
だから
理由はなくても と私は言ったわ
いけないことはいけないことなんでしょう って
一歩外に出てみれば驚くほどに
世界は広くて今や多様性の時代
縛られていたことが嘘のようで
法に触れない範囲のことでなら
禁じられてきたたくさんのこと
大概やったんじゃないかと思う
でも 気づいてしまったの
禁止されていたことこそ
やりたくなってしまうってことに
禁止されていたことだからこそ
やろうとしているってことに
自由になろうとしては
過去を思い返してるの
縛られたくはないがゆえに
過去の記憶に縛られてるの
今だってそうよ 生きているのは
思い通りになんてさせやしないと私が抗っているから
私がもし死んだらほんの少し悲しんでから
でもこれでよかったんだとか言って喜ぶ人たちがいるのよ
だから死ぬわけにはいかないの
思い通りになんてさせやしない
私は生きて
生きてやるわ
自由になったはずが
自由にならなくちゃと追い込んでいて
幸せになったはずが
幸せにならなくちゃと追い詰めていて
まるで強迫観念みたいに
縛られまいとして
結局縛られてるの
切り分けたいこの矛盾を抱えてでも
深層に根付く縛りがほどけなくても
それでも私は生きて
生きてやるわ