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子どもが登場する狂言

以前、能を演じる子ども達と題して、能の子方について紹介しましたが、今回は狂言の子方を紹介します!

「猿に始まり狐に終わる」という言葉があります。
これは狂言の修業過程をたとえたもので、「猿」とは、「靭猿(うつぼざる)」「狐」とは「釣狐(つりぎつね)」という演目を指します。

「靭猿」は、猿の皮が欲しいと大名に迫られた猿曳き(さるひき)が、猿を殺そうとしますが、無邪気に芸をする猿をどうしても殺すことができません。
猿曳きが泣き伏すと、大名も哀れに思って一緒に泣き、猿の命を助けます。
猿曳きがお礼に猿歌を歌って猿に舞を舞わせると、大名もその真似をする、という内容で、猿の愛らしい姿が魅力の演目です。
猿役を子方が演じますが、「モンパ」という猿のぬいぐるみと猿の面(おもて)をつけ、セリフではなく「キャアキャアキャア」と言うので、子どもの初舞台に適した演目とされています。

靭猿イラスト

(靭猿のイラスト)

「靭猿」と同様に、子方が演じる演目として「以呂波(いろは)(流儀・家によっては「伊呂波」)」があります。
大蔵流ではセリフのある「以呂波(伊呂波)」で初舞台を踏むことが多いようです。

「以呂波(伊呂波)」は、親が子ども(祖父と孫の場合も)に「いろはにほへと」を教えようとしますが、子どもは一字ずつ教えて欲しいと注文をつけます。
子どもの受け答えが屁理屈ばかりなので、おうむ返しをさせようとすると、子どもがすべての言葉を真似るため、親は怒ります。
ついには叱り文句までも真似をするという演目です。


能の主役をシテと言いますが、狂言も主役をシテと言います。「以呂波」では子ども役がシテになるので、狂言では初舞台でシテを演じることになります!

子どもらしさをあえて見せる「演目」や、大人でも演じる太郎冠者の役を子どもが演じる場合があるのも狂言の特徴といえますね。

他に、子方が演じることが多い演目として、「居杭(井杭)(いぐい)」や「痿痢(痺)(しびり)」があります。

★21.03.21 山本会別会(撮)前島吉裕 (169)☆02

「しびり」
シテ(太郎冠者)山本則光
アド(主)山本則重
後見 山本則俊

山本会別会(2021年3月21日)
撮影:前島吉裕


家単位で演じることの多い狂言では、「靭猿」では、大名・猿曳き・猿の役を、祖父・父親・子どもの三代で、
また、「以呂波」では親子の役の通り、実の親子や、祖父と孫、叔父と甥で演じることも多いといえます。


囃子方や地謡が登場しない演目が多い狂言では、舞台に上がっている役者が身内だけということもしばしばあります。
実の親子や祖父孫・親戚同士で演じられる舞台は、観客にとって微笑ましかったり、あるときは心を揺さぶられる舞台になります。


特に「靭猿」で、猿曳きが子猿に語って聞かせる場面は、猿曳きと子猿の姿に実際の親子の絆を重ねてしまい、ちょっと泣きそうになります笑。


子どもが登場する狂言をご覧になるときは、その辺りもぜひご覧くださいね!

【前回の記事はこちら!】
能を演じる子ども達(1):意外と忍耐が必要!?
能を演じる子ども達(2):「大人の役」を子方(子役)が演じることもある

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