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能の小書(こがき):能の特殊演出について

能の小書とは特殊演出の名称です。番組の演目名のところに小さな文字で添え書きされることから「小書」と呼ばれています。

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(国立能楽堂8月公演 詳細はこちら

流派ごとに小書の違いがあり、すべての流派の小書を合わせると750種ほどあります!

扮装や作り物(舞台装置)、人物の詞章(セリフ)やお囃子の変更など様々な演出があります。
今回は、舞台を見ていて比較的わかりやすい小書をご紹介しますね!

【扮装に関する小書】

装束や能面、鬘(かづら)など、扮装が変わる小書の紹介です。

◆白頭/黒頭/赤頭(しろがしら・はくとう/くろがしら/あかがしら)
これらは鬘(髪の色)が通常とは異なる小書です。
文字の通り、白頭だと白い鬘、黒頭だと黒い鬘、赤頭だと赤い鬘を身につけて登場します。

たとえば、「小鍛冶」には「白頭」の小書がどの流儀にもあり、より神聖な存在として解釈できますが、流儀によっては前シテが童子ではなく、尉(老人)になったり、面(おもて)を変更したり、同じ小書名でも流儀により、また同じ流儀であっても演出の幅が異なります
観世流にのみある「小鍛冶」の「黒頭」の小書は、「白頭」よりもより重い扱いになります。

小鍛冶02

【左】小鍛冶 
 中森貫太 ワキ 殿田謙吉
(2017年1月14日 府中市民能 撮影 駒井壮介)
【右】小鍛冶 白頭 
 中森貫太
(2021年3月10日 能を知る会 横浜公演 撮影 駒井壮介)
●中森貫太師について
【note】https://note.com/nakamorikanta
【鎌倉能舞台】https://www.nohbutai.com/


また、「道成寺」には「赤頭」の小書がある流儀がありますが、金春流では小書なしの通常のやり方が赤頭です。

ところで、この頭の毛は、ヤクというウシの仲間の動物の毛を使用しているそうです!

替装束(かえしょうぞく)
通常とは違う装束や能面を身につける特殊演出です。
この小書がつく演目は20以上ありますが、どのように変わるかは演目によって違ってきます。

【舞に関する小書】

小書で多いのが「舞」の特殊演出です。
多くの演目で使われる小書をご紹介します。

◎彩色(さいしき・いろえ)
関西では彩色と書いて「いろえ」と読むことが多いですが、舞の導入や舞の後に舞台を一巡する「イロエ」と呼ばれる所作が入ったり、通常では舞が入るところを、舞を舞わずに代わりに「イロエ」を舞うものです。

◎盤渉(ばんしき)
舞の時に演奏される、囃子の調子の一つです。
通常より高い音で、笛の調子が変わるのに伴いシテの足拍子や打楽器の打ち方も通常とは違ってきます。
高い音の囃子ですと舞の印象も変わってきますので、ぜひ注目してみてください。


今回は、多くの曲で使われる小書をご紹介しました。
次回は、有名曲とその小書をご紹介します!

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