見出し画像

新作能「沖宮(おきのみや)」再演:金剛流と宝生流のW主演


「沖宮」は2018年に熊本・京都・東京で上演された金剛流の新作能です。
このたび、クラウドファンディングが達成したことにより、2021年6月12日(土)に金剛能楽堂で再演されます。
初演時とは違って、金剛流若宗家・金剛龍謹師と宝生流宗家・宝生和英師が両シテ(W主演)として登場します。

【「沖宮」ホームページ】
https://okinomiya.jp/


島原の乱の後、干ばつで苦しむ村のために、「あや」という少女が生贄(いけにえ)に捧げられる。この少女は天草四郎の乳兄妹だった。
あやは小舟に乗り、沖へ流されていく。あやの犠牲によって、村には恵の雨が降ってくる。
雷鳴がなった時、あやは海へ投げ出されてしまう。
その時、天草四郎が現れ、あやの手を引いて、大妣君(おおははぎみ)という神が居るという「沖宮」へ向かう。


●「沖宮」の見どころ


(1)装束

「沖宮」は、あやと天草四郎は、人間国宝である染織家・志村ふくみ氏が監修した装束を身につけます。
あやは緋(ひ)色(志村氏が「天上の赤」と呼ぶ赤色)、天草四郎は水縹(みはなだ)色(「天青」と呼ばれる青色)の装束を着て舞台に立ちます。
「沖宮」のために染められた糸を手機(てばた)で織り上げた優しい風合いと、舞台に映える美しい色が目をひきます。
この色は精神性の高い色とされ、二人を象徴する色ともいえます

画像1

画像2

写真提供 アトリエシムラ


(2)物語


「沖宮」は、作家・石牟礼道子(いしむれみちこ)氏が書き下ろしました
2011年の東日本大震災による原発事故をきっかけに、近代日本への危機感を募らせた志村氏から石牟礼氏へ手紙を送り、その後約2年間の往復書簡の中で誕生した物語です。
石牟礼氏の著書で有名なものは、水俣病の方々の声を記した「苦海浄土(くがいじょうど)」で、人間の尊厳や命について書かれた本です。
「沖宮」でも、乱で亡くなった人たち、親を失い孤児となった子供たち、干ばつで飢える人たち、そして生贄に捧げられる少女というように、命が失われることとその悲しみに寄り添おうとしているように感じます。

石牟礼氏が書いた新作能は「沖宮」だけではなく、「不知火(しらぬい)」という曲もあります。
こちらの物語も水俣病をテーマにしており、2002年、観世流によって初演され(「橋の会」にて)、以後再演もされています。


(3)新しい演出

今回は宝生流宗家・宝生和英師が大妣君役として登場します。この役は、初演時には登場しなかったので、今回の公演では「沖宮」の物語がより深く語られることとなります。
また、大妣君の装束も志村ふくみ氏が新たに作り上げたので、そちらにも注目です。

沖宮02

「沖宮」金剛龍謹 豊嶋芳野
撮影 上杉遥

●「沖宮」を楽しむために


(1)オンライン配信

基本的に鑑賞チケットはクラウドファンディングのリターンでしたが、この度企画者の計らいによりオンライン配信チケットは誰でも購入できるようです。
現時点で次回の公演は決まっていませんので、この機会にご覧ください!

https://peatix.com/event/1901702/view 
(※peatixより購入可能です。)

・リアルタイム視聴
 日時:2021年6月12日(土) 夜公演/18:00〜

・見逃し配信
 配信期間:2021年6月15日(火)14:00 〜 6月30日(水)23:59

(2)関連書籍・映像

書籍・映像はこちらからもご覧いただけます。
ぜひご覧ください。

檜書店 【新作能「沖宮」特集】
https://www.hinoki-shoten.co.jp/t/384

・DVDブック
2018年の東京公演の映像と、志村ふくみ氏や金剛宗家のインタビューが収録されています。
この映像を観ると、志村氏と石牟礼氏がどのようなやりとりをしていたか、また能楽師がどういう思いで能を演じたか分かると思います。

・イメージブック
志村ふくみ氏の衣装、能の舞台となった島原の風景などの写真が掲載されたイメージブックです。
「沖宮」の世界観を深く知っていただける書籍です。

沖宮book

(左:DVDブック/右:イメージブック)

・遺言

東日本大震災以降、志村氏が石牟礼氏へ手紙を送ったことから始まった往復書簡の記録です。
ちょうど石牟礼氏が新作能「沖宮」を書いている時だったため、「沖宮」についても書かれています。


・謡本「沖宮」
増刷の予定はありませんので、この機会にぜひ!

沖宮


・雑誌「観世」5-6月号
雑誌「観世」5-6月号の巻頭随筆に「アトリエシムラ」の志村昌司氏からご寄稿いただきました。
この度のクラウドファンディングの企画者でもあり、「沖宮」に対する思いを綴っていただきました。

「アトリエシムラ」のnoteもあります!
金剛龍謹師と志村昌司氏の対談がありますので、ぜひご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?