
観阿弥の掟「鶯(ウグイス)を飼っちゃダメ!」
春告鳥(はるつげどり)とも呼ばれるウグイスの「ホーホケキョ!」の鳴き声、今年はすでにお聞きになられましたか?
この鳴き声で知られるウグイスですが、実は一年の大半は「ジャッ、ジャッ」と鳴きながら藪(やぶ)の中で過ごしているので、英語では「bush warbler」と呼ばれるようですよ。

狂言『察化(咲華)(さっか)』にも、「藪のうちを、あちらへはチョイ、こちらへはチョイ、と飛うで面白う鳴く鳥」というセリフが出てきます。
狂言和泉流の『佐渡狐(さどぎつね)』では、狐の鳴き声を知らないシテが、ウグイスの鳴き声である「月星日(ツキホシヒ)」と答えるシーンがあります(ちなみに、大蔵流だと「東天紅(トウテンコウ)」と、鶏の鳴き声を答えます)が、能『白楽天(はくらくてん)』では、梅の木にウグイスが来て、
初陽毎朝来不遭還本栖(ショヨオマイチョオライフソオゲンポンセイ)
と鳴いた、とあります。そしてこれは三十一文字の和歌だったということで、
初春の朝(あした)ごとには来たれども遭わでぞ還る本の栖(すみか)に
という和歌が紹介され、和歌説話での話が取り上げられています。
このエピソードは和泉流にのみある狂言『鶯』の中の語りでもあります。この狂言『鶯』はウグイスを捕獲しようと奮闘するお話。

(平成25年5月19日 三宅狂言会 撮影:辻井清一郎)
現代では、野鳥を捕獲することは禁じられていますが、昔はウグイスを捕まえて飼い、「鶯合(うぐいすあわせ)」という鳴き声を競う遊びが行われていました。
世阿弥の『風姿花伝』には、
好色、博奕、大酒。三重戒、是、古人の掟也。
と、三つの戒めが記されており、さらに『申楽談儀』には、この三重戒にもう一つ加えた四重戒が紹介されています。
好色、博奕、大酒、鶯飼うこと、これは清次の定也。
清次(きよつぐ)とは世阿弥の父の観阿弥のこと。観阿弥は「鶯を飼うこと」もきつく禁じたというのです。その頃ウグイスを飼うことが大流行したらしいのですが、酒や博奕と並んで稽古に差し障りがあるほどだったのでしょうか(笑)!?
ちなみに世阿弥の掟と観阿弥の掟は、こちらでもご覧いただけます!
