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能を演じる子ども達(1):意外と忍耐が必要!?
能には大人だけではなく、子ども達も登場します。
子ども達は、現代の演劇のように「子役」とは呼ばず、「子方(こかた)」と呼びます。
子方は能楽師の家の子どもが演じることが多く、また、大体小学生くらいまでのお子さんが多いようです。
子方は大人と一緒に登場し、舞台上に長時間います。
中には「作り物(つくりもの)」と言われる舞台装置の中で長時間待機することもあります。
ドラマ「俺の家の話」でも登場した「隅田川/角田川(すみだがわ)」という演目をご紹介します。(※金春流では角田川、その他の流派では隅田川と書きます)
「隅田川」では亡くなった息子・梅若丸の亡霊として登場しますが、子方は「作り物」の中に終盤まで入っています。
大人でもなかなかの忍耐ですよね…子方の皆さんには頭が下がります。
「隅田川」のあらすじはコチラ(能楽鑑賞多言語字幕サービス「能サポ」)
この演目は完全な悲劇のお話です。
この物語は多くの方の心に残り、後世の歌舞伎や文楽でも物語として登場します。
演目:角田川 シテ:井上貴覚 子方:井上和奏
金春会定期能(平成29年3月12日)
撮影:辻井清一郎
塚(母親の後ろにある作り物)の中から出てきた我が子・梅若丸を母親が抱きしめようとする場面。
近く「隅田川/角田川」が上演される催しは、4/4(日) さくら能[京都]、4/18(日) 豊田市能楽堂公演 卯月能[愛知]、5/8(土) 硯修會[東京]、5/22(土) 林定期能[京都]などです。
ぜひこの機会にご覧ください!
(「隅田川」の作り物)
最後に…
ドラマの中で、「梅若丸の亡霊を登場させるかさせないか、世阿弥と「隅田川」の作者で長男の元雅の間で相違があった」という話がありました。
その時「して見てよきにつくべし。せずは善悪定めがたし(実際にやってみて良い方をすればよい。やってみないとわからない)」と世阿弥が言ったと『申楽談儀』に残っています。
この言葉は、こちらの書籍でも引用しています。
「世阿弥のことば100選」
檜書店では、能楽師・能楽関係者はじめ、様々な分野で活躍されている方々に、それぞれお気に入りの「世阿弥のことば」を取り上げてもらいご紹介した本を作りました。
皆さんがどのように世阿弥の言葉をとらえているかが分かる、読みやすい書籍です。
https://www.hinoki-shoten.co.jp/p/c8/482790994 (檜書店HP)
(画像:「申楽談儀」「世阿弥のことば100選」)
また、『申楽談儀』は、世阿弥の次男の元能が父の言葉を書き留めた書籍です。現代語訳もございますので、こちらもどうぞ!
「現代語訳 申楽談儀」
先人の逸話や能面・能装束の話、演技する際の注意点など、世阿弥の考えをまとめたものです。
体系的な論集ではありませんが芸能にとって重要な史料です。
https://www.hinoki-shoten.co.jp/p/c/482790999 (檜書店HP)