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昭和の子どもの夢の世界:インガルス一家の物語「大きな森の小さな家」

先日、好きな本のことを書きながら思い出していたら、(これね↓)

無性に「大草原の小さな家」シリーズを読みたくなった。

私の行動はいつも、こんなふうに思いつきから始まる。
欲しくなったら我慢できない・・・

メルカリで見つけて。
5冊で3000円。
安くないけど。

どうしてもまた読みたい。

あのペンシル描画の挿絵ももう一度見たい!

ということで、メルカリをポチ。

ご購入!

すぐに来た!!感謝

そうそう。

「大草原の小さな家」ばかりが有名だけど、最初は大きな森、から始まるのよ。

この挿絵で、小さい頃の私を始め、多くの少女が見たこともないアメリカの大自然の景色や、そこに生きている開拓時代の家族を想像させられたのよね。

でも、改めて大人になって読み返してみてわかりましたが、

挿絵しか記憶になかったけど。

文章が素晴らしい!


風景描写。
生活の描写。

現代の小説みたいに起承転結がスピーディーに動くわけじゃない。

のんびり、じっくり、ゆったりと物語が進んでいくけれど。
じっくり読み進むうちに、頭の中に、アメリカの鬱蒼とした大きな森の景色が広がっていくんですよ〜。

むかしむかし、いまから百年もまえに、北アメリカ、ウィスコンシン州の「大きな森」の、丸太づくりの小さな灰色の家に、小さな女の子が住んでいました。
その家は、「大きな森」のくろぐろとしげった大木にかこまれ、その大木の先にも、またその先にも、どこまでも大木がしげっていました。人が、北へむかって、一日、一週間、いいえ、まるひと月歩きつづけても、この森からぬけだすことはできないのです。家は一軒もなく、道もありません。
人もいません。あるのは木ばかり、見かけるのは、森に住む野生の動物だけでした。
「大きな森」には、オオカミが住んでいました。クマも、大ヤマネコも。ジャコウネズミやミンクやカワウソは、小川のそばに住んでいました。キツネは丘に穴をもち、シカは、あちらこちらを、のんびり歩きまわっていました。
小さな丸太の家の東にも西にも、何マイルも何マイルも木立がつづき、「大きな森」のおわるあたりに、たった三、四軒の小さな丸太の家が、遠く、はなればなれにたっているきりでした。

福音館書店「大きな森の小さな家」

冒頭、女の子が登場して、物語が進行するまでに、こんな情景描写がずーっと続きます。
しっかり活字を追っていくと・・・

還暦近い、コンクリートのように固まった脳みその私の頭の中にも、光景が広がるから。

今みたいに大した情報もない、昭和の小学生の、スポンジのように柔らかくて、キャパも広かったであろう頭の中には、映画のような光景が広がったんだよね。

挿絵だけじゃない。
文章もすごかった。
そして、

翻訳も素晴らしい!


素朴で素直に訳している感じだけど、言葉を選んで、この大きな森の小さな家の、小さな家族の、優しくて、温かい雰囲気が絶妙に表現されていて!

子どもの頃は、そこまで気づかなかったけれど、簡単なようで、とても入念な作業だと思う。

ちなみに訳者は、恩地三保子さん。

調べたら若草物語も、あしながおじさんも訳してるらしいので、きっと子どもの頃に同じ訳文を読んでる気がする。

残念ながら原語では読んだことがないんだけど。

きっとネイティブの方なら、原語で読めば、原語の描写の素晴らしさも味わえるんだろうな、と羨ましい。

ブタのしまつの大仕事がすむと、ソーセージ、頭肉チーズ、大鉢一ぱいのラート、塩づけの白身のブタ肉のたるが納屋にならび、屋根裏部屋には、いぶしたもも肉と肩肉がさがっていました。
長い冬にそなえて、小さな家は、上等な食料ではちきれそうでした。食料部屋も納屋も地下の穴蔵も大入満員で、屋想裏部屋も、やはりいっぱいでした。
ローラとメアリイは、もういまは、家のなかであそばなければなりません。外は寒くて、枯れ葉がどの木からもおちてしまいました。料理用ストープの火は、いつでも燃えていました。
とうさんは、寝るまえに、火を灰でよくかこんで、石炭が朝までに燃えつきないようにしています。
屋根裏部屋は、あそぶのにはすてきな所でした。色とりどりのまるいカボチャは、きれいな椅子やテーブルになります。頭の上には、タマネギやトウガラシが、ぶらぶらさがっています。ハムやシカは、紙できちんとつつんでさげてあり、ほした葉のたばがーいいにおいのするのは料理用、にがいのは薬にするのですがーかわいた土のような、香ばしいにおいをいつもさせていました。

福音館書店「大きな森の小さな家」

大事に育てた豚一頭を、長い冬の前に処分して、一晩過ごせるように、無駄な所を一つも余さず、保存食にするところなど。
ブタの膀胱は風船にして遊ぶんだよ。

福音館書店「大きな森の小さな家」


消費社会と化したアメリカ始め、現代の先進国には、もはや想像もつかない世界だと思う。

福音館書店「大きな森の小さな家」より

カボチャの椅子に座って、とうもろこしの芯で作ったお人形さんを抱いて、それでもとっても豊かな子どもの遊び時間だったんだろうなぁ。

「アルプスの少女ハイジ」にも憧れた、昭和の少女には夢の世界だった!

まだ冒頭を少し読んだだけなんだけど、
すでに、なんか!
懐かしさと、新たな発見と、ゆったり進む物語、描写表現、そして挿絵の表情の豊かさ。

いろんな感情が渦を巻いてます。

この時代の子どものように。

慌てないで、毎日少しずつ、ゆっくりじっくり読み進めていきたいな、と思っています。

次の発見があったら、またご紹介したいと思います!

お読みいただきありがとうございました。


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