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逢いたい菜 #毎週ショートショートnote

「いらっしゃい!旬の逢いたい菜、いかがですか〜?」

ここは町の小さな八百屋。
看板娘アナの声で1人、また1人と客が来る。
逢いたい菜はこの辺り名産の野菜だ。一口食べれば大切な人の顔が脳裏に浮かびみんな笑顔になる。つい「逢いたいな...」と溢してしまうことから、この名がついた。

「ふん、デタラメなこと言って変な野菜売りやがって」

店に現れた少年が、そう言って葉っぱの部分をちぎった。

「あっ、うちの商品に何すんだよ!」

アナがすかさず叱ると少年が言う。

「野菜なんて苦いし嫌いだ。逢いたいやつなんていないし」

悪態をつく少年を見て、アナは少し考えた。

「よし、じゃあちょっとそこで待ってろ」

アナは少年が傷つけた逢いたい菜を持って奥の母屋に入っていった。
しばらくして、タッパーを持って戻ってきたアナはそれを少年に渡す。

「ほら、これならきっと食えるよ」

「なんだよ、これ」

「これ?そうだなぁ、"逢いたい人がこれからいっぱいできますよう煮"かな」


(409字)


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日野笙 / Sou Hino
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