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残り物には懺悔がある #毎週ショートショートnote

いつもの朝。
最後の仕上げとばかりに添えられる私。ママが優しい顔で蓋を閉める。
今日は食べてもらえるといいんだけど。

お昼になり、再び箱が開かれると子どもたちが一斉に覗き込む。

「わぁアヤちゃんのお弁当きれい!」

「うぇ、またブロッコリー入ってる…」

お友達は褒めてくれたのに、本人は憂鬱そう。彼女は私が嫌いなのだ。次々と中身が減っていく中、案の定私だけが箱に残った。
あぁママ、ごめんなさい。

行きは身動きが取れなかったのに、彼女が歩く度にころんころんと転がりまわる帰り道。
今日も食べてもらえなかった。私が美味しくないから。せっかくママが入れてくれたのに…。一人っきりの箱の中はさながら懺悔室のようだ。


「ほら、早く早く」

家に着いた彼女が小さな声であの子を呼ぶと、懺悔室の蓋が開いた。私はぽとりと銀の器に落とされる。

「ママー!全部食べたよー!」

悪びれもせずキッチンに走っていく彼女。
あぁ、やっぱり。私は今日もここなのね。
向こうから、茶色いあの子が尻尾を振りながら向かってくる。


(430字)


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