【風呂酒日和54-2】 大衆酒場 喜代美
今日も今日とてGoogleマップを頼りにテクテクと歩く。
途中踏切のないただの行き止まりにぶつかったり、GPSの向きが間違っていて迷いながらもなんとか池上駅の方までたどり着く。
ほんと方向音痴、治らない。
すでにちょっと道が逸れてしまっていたため、居酒屋チェーンが並ぶと思われる駅前通りをスルーして、ちょっと歩いた向こう側にぽつぽつと点る小さな個人店の並びっぽいところへ。
やっぱりこういうところの方が惹かれる。
いくつかバー、バルなどが並ぶ中、マップを見て気になっていたお店の前に到着。
むむ、明かりはついているように見えるが暖簾は向こう側にある模様。
開店前か、今日はやっていないのだろうか。
そういう時いつもは素直に諦め、違うところに足を向けるのが定石なのだが、なぜだか今日の私はなんのためらいもなくその引き戸をからからと開けた。
お客さんはゼロ。
カウンターの中には店主と思われる女の人が1人。
店名から、なんとなく30〜40年くらいやっているおばあちゃんがいるのかな、なんてイメージだったが想像よりずっと若い。
「すいません…1人なんですが、今日はやってますか?」
おそるおそる聞くと、え?なんでここに来たの?というような調子で女の人が答えた。
「あー。やってるはやってるんだけど、ちょっとこのご時世もあって、今はおでんも仕込んでないし、酒だけはあるけど、食べ物がほとんどないんだよね…それでもよければみたいな感じになっちゃいますけど。」
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