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失恋墓地 #毎週ショートショートnote

人は恋を失うとここに来て、思い出を壺に詰めて埋める。
次の恋に進むための願掛けの儀式みたいなものだ。
管理人の男が墓の周りを掃除していると、女が現れた。

「おや、貴方でしたか。今回はまた、早かったですねぇ」

「ダメだったんです...だってあいつ、元カノと隠れて会ってたんですよ!」

男は女から壺を受け取る。

「しかし、こうもハイペースで失恋なされるとこちらも大変だなぁ。墓誌もそろそろ書ききれないし、壺もあといくつ入るか...」

「そんなこと言ったって私だってしたくて失恋してるわけじゃないんです!毎回もう二度と失恋はしない、この恋が最後の恋だって思ってるんです」

「なるほど...。じゃあいっそのこと、墓じまいします?」

「それは...もう恋するなってことですか?」

「いえ、僕と一緒になるのはどうかなと。絶対に貴方を裏切りません。どうですか?」

「...一緒の墓に入ろうじゃなくて、墓じまいしようってプロポーズ、初めて聞きました」

女はそう言いながら、差し出された男の手を取った。


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