メガネ初恋 #毎週ショートショートnote
初恋は5才、相手は近所に住むお兄さん。
背が高くて、長い前髪と銀色のメガネが、当時好きだったアニメに出てくる男の子に似ていた。
道で会うと挨拶してくれる。優しい声が好きだった。
初恋は実らないと言うし幼稚園児の恋なんて当然叶うわけないんだけど、私の恋の法則はきっとそこで決まったんだと思う。それから好きになった人はみんな、彼みたいなメガネをかけた人だった。
大学生になって街を離れ、久しぶりに実家に戻る。
懐かしい道を歩いていると、聞き覚えのある声がした。
「久しぶり、帰ってきてたんだ」
ちょっと下を向いたのはドキドキが止まらなかったから。
そうか、ここはあの帰り道。
初恋が実らないなんて嘘かも。
運命の人は、やっぱり彼なのかも。
そう思って顔を上げ、そして私は何も言わずに走り去った。
違う。
あんなじゃなかった。
もっとすらっと細かったし爽やかで繊細な感じだった。
メガネもかけてなかったし。
...そうか、わかった。
私の初恋はあの人じゃなかったんだ。
私はきっと、あのメガネに恋をしてたんだ。
そうに違いない。
幼い頃のキラキラした思い出と恋心をそっと守りたくて、私は自分にそう言い聞かせた。
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