錬成は電卓の親族 #毎週ショートショートnote
祖父が死んだ。
身も蓋も無いが、俺は祖父の財産にかなり期待している。
なぜなら親父をはじめ、息子たちは祖父とほぼ絶縁状態だからだ。祖父曰くあまりに厳しく育てたせいで皆寄り付かなくなったんだとか。
そんなこともあってか、孫の俺はそれはそれは可愛がられた。言えばなんでも買ってくれたしやらせてくれた。学歴や職歴も全て祖父のコネで得たものだ。
絶縁状態の親父たちとずっと溺愛されてきた俺。どう考えても俺が一番財産をもらえるだろう。もしかするとあの家も俺のものになるかもしれない。
ほころぶ顔を隠して広間に向かう。
すると奥の個室から声がした。親父とその兄弟だ。俺は思わず立ち止まり、中の様子を伺う。
「じゃあそのように処理するよ」
「銀行関係の書類は?」
「それはこっちに任せてくれ」
「土地と物件は?」
「もうとっくに動いてる」
弁護士、司法書士、銀行員に税理士。
厳しい祖父の教育によって錬成された者たちが、俺には全くわからない言葉を話しながら電卓をたたいていた。
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