【風呂酒日和152-2】 かぜや
腹ペコで生姜焼きとか鯖の味噌煮とか定食系ティピカルご飯を欲しながら富士の湯を出た私は、本蓮沼の方にてくてく歩いていく。
ここは…なんだろう。
左右に大きな公園っぽい空気が漂う。マップで見ると、予想通り大きめの公園が並んでいた。どおりでなんだか静かだし空気が澄んでると思った。
大きい通りだが、2.3軒コンビニなどはあったものの、飲食店などのお店は全然見当たらない。とっても落ち着いた街並み。これ、目指してるところが閉まってたら急にピンチになるパターンかも…。
しばらく歩くとラーメン屋さんとバーっぽいお店が現れ、その並びに一際光る場所が。あぁコインランドリーか。なんかこの一角だけちょっと栄えておる。左側にコインランドリー。そしてその隣が目指していた「かぜや」。
よかったーやってるっぽい。
店構えからこれは美味い気配がするぞとわくわく。
普通の家の玄関ドアみたいな開き戸をガチャリと開ける。すぐ右手に小上がりの畳座敷席、そして奥にカウンター、さらに奥に厨房がある。
中に進んでいくと「いらっしゃいませ」と店員さんが気づいてくれた。多分彼がマスターだ。1人でお店をやっているっぽい。
「1人なんですが...」
「はい、空いてるカウンター席にどうぞ」
店内は小上がりに4人客が1組、そしてL字のカウンターにはカップルが1組と、1人飲みと思われる外国人のお兄さんが1人。どちらも馴染んで見える。常連さんかしら。
カップルとお兄さんの間のカウンター席に座り、メニューを開く。さてさてさて、ごはん系?おつまみ系?どうしよっかな。
Googleマップで写真を見て、てっきりごはん屋さんでお酒もあるよ系のお店かと思っていたが、私が見ていたのはどうやらランチの写真だった模様。メニューを開くと普通に居酒屋さんのようだ。
メニューは本日の推し品と書かれたA4の紙が1枚とグランドメニューの冊子。グランドメニューはほとんどお酒で種類がかなり豊富。とくに日本酒と焼酎のラインナップがすごい。
冊子の最初のページにはうちはこういうお店ですというような説明がいくつか書かれている。ふむふむ。
なんだか今日は銭湯に引き続きお店からのメッセージをよくキャッチする日だ。
とりあえず瓶ビール頼もう。サッポロ黒ラベル。
あとは...色々迷いながらも、ワンオペで忙しそうだったのでビールが来たタイミングでパッと目に入ってきた秋刀魚の塩焼きとタコと茗荷の梅和えを注文。ふふふ...今年初サンマだ。わくわく。
向こうの席の欧米人っぽいお兄さんに刺し盛りが到着。
うんまそー。そして厨房の奥からパカっと音が聞こえてカウンター越しに何かを渡している。今の音はきっと炊飯器を開閉した音だ。にゃるほど、お刺身と白ごはん。お刺身定食ですね。いいねぇ。
そういえばお兄さんはお酒を飲んでなかったかもしれない。ちょうどこの角度からはテーブルの様子がよく見えない。
さてはお兄さん、この辺に住んでますね?そしてここは居酒屋さんだけどご飯が美味しいと知っていて、よく夕ご飯を食べに来る常連さんと見た。乙な使い方しとる。(勝手な想像)
しばらくするとタコと茗荷の梅和えが到着。ガラスの器に盛られていて、ちょうどいいアテという感じの量。でも腹ペコで来てしまったため、なんとなく少なく見えてしまう。
待て待て焦るな、これからサンマさんもいらっしゃいますから。きゅうりも入ってて見た目も綺麗だし、食感も良さそう。ではいただきます。
うーん、きゅっとしてうまい。
頼んでおきながら言うのもなんだけど、実は梅自体はそこまで得意な方ではなくあんまり自分からは食べないのだが、レバーと一緒でなぜかふと食べたくなる時がある。
こういう時は体が求めていると信じて食べてみる。そしてやっぱり欲していたのか、この酸味がいい感じに体に染み渡っていく気がする。
あぁ、やっぱり今日はごはんデーかも。
いつもなら梅和えをちびちび食べつつメインの秋刀魚をいただき、軽くもう一品ともう一杯という感じだが、めずらしく瓶ビール半ばにして満足感を覚えているし、お米が食べたくなってきた。
焼きおにぎり...いや、やっぱり秋刀魚があるし白米かな。むむ、蕎麦もある。蕎麦で〆もありだなぁ...迷うぜ...。
「お待たせしましたー秋刀魚の塩焼きです」
色々考えていると、秋刀魚が到着。それ見た瞬間、方向性が決まった。
「すみません、あとご飯とお味噌汁下さい」
焼きたての秋刀魚を見た瞬間メニューにあったご飯小盛りと赤だしのセットに即決。もうこれしかないでしょ。今日はサンマ定食!
では、いざ!いただきます。いい焼き目のついたサンマに箸を入れ一口。
ほぎゃぁぁぁ!(美味しすぎて心の中で吠える)
うんま...!秋だ...口の中に秋が来た。パリじゅわな焼き具合、めちゃくちゃいい塩加減。そしてあえて最初に食べたワタの部分。からのビールをごくごくー。
よい…!そう、これなのよ...ちょっと苦めでめちゃくちゃちょうどいいアテ。秋刀魚、大正解。しあわせ。
しばらくすると「まずはごはんからー」と言ってカウンター越しに白米がきた。わお!全然小盛りじゃない。普通盛りほくほくごはん。
これはもうちびちび食べずにもりっと大口で口いっぱいに食べるのが吉でしょう。では大根おろしにお醤油を垂らして、秋刀魚にそっと乗せてぱく。
んー!!そしてすかさずごはんを目一杯頬張る。
あぁ…なんだこれ。目眩がするような美味しさ。今、ここ最近で一番幸せかも...。
空腹の時にあったかごはんを口いっぱい頬張ることに勝る幸せってあるだろうか。いや、ない。
英断だ…今日は秋刀魚定食を味わう日だったんだ。そこにタコの前菜と、ビール付きとは...なんて贅沢な。
感動しているとたくあんと赤だしの味噌汁が追いかけるように到着。いそいそと赤だしすする。つぁーー。
あっつあつの味噌汁が体の中を降りていく。うーんまい。
赤だしのお味噌汁、久しぶりに飲んだなぁ。
唐突に偏見な上に悪口だが、赤だしの味噌汁が好きだと言う男で赤だしの味噌を自ら買ったことがあるやつを私は見たことがない。
要するに作ったことはないがママの作る味噌汁が赤だしだったか、ちょっと通ぶって「赤だしが好き」と言いたいだけなのだ。(存分に偏見が含まれております)
そんなトラウマじみた偏見により、赤だしに罪はないのになんとなく赤だしのイメージが今まであまりよくなかったが、いや、普通にうまい。知ってた。赤だしよ、八つ当たりしてごめんな。
ほかほかご飯と焼きたての秋刀魚がうますぎて無心でモリモリ食べ続ける。途中でポリっとたくあんを挟み、味噌汁をすすり、梅和えにも手を伸ばす。このループ、無限にできる気がする...。
ふぅ、すんごく美味しかった...。
秋刀魚って細いし、美味しさのあまり「え、こんなん瞬殺じゃん」なんて思いながらが食べていたが、無事ごはんと秋刀魚を食べ終えると腹八分目くらいのちょうどいい感じ。
残るはたくあん1枚と赤だしが少し、タコ茗荷とビールが約1杯分。うわ...この布陣、というかここまでの流れ、最高かも。
最初に冷菜でちびちび飲み始め、途中でアツアツご飯とメインをもりもり、そして最後に再びちびちび飲みに戻る。
お酒のゆっくりした時間も味わえるし、食事のパワフルな幸せも味わえる。理想系かもしれん。
いつもビールやらハイボールやらホッピーやら、冷たくてしゅわしゅわなお酒と、お刺身とかサラダとかこれまた冷たいおつまみを欲してしまう私だが、今度からお腹がめっちゃ減ってる時は食事メインのプチ飲み会コースにしよう。
なんか心も体もあったまるし、充足感がすごい。そして勢いよく食べたせいかさっそく眠気もすごい。さすが炭水化物。
うむ、大満足。ふらっと入ってみたけどかなり素敵な穴場を見つけてしまった。
ごちさうさまでした。今度はお刺身食べに来よう。