居士林の屋根をふき替える若者の姿が青空に映えて美しい。実家からの帰り道、寺のベンチに座ってそれを眺めながら、昨日の夜のことを思い出していた。
仕事を辞める。8か月振りの帰省の目的は、その報告だった。相談ではなく、報告。それに対する父の反応には、不同意と心配が込められていた。
「仕事がつまらないのか」「新しいカイシャで何をやりたいのか」。私は、その不同意と心配に正面から向き合わず、「やりたいことがある」とだけ答えた。
新しい仕事に対する夢。それが無理なら、不安。その一端でも語って見せればよかった。そうすれば、あるいは、迷いや雑念を抱えここに座ってはいなかった。