無人島(1)
無人島であるS島に、私たちは、日常からの解放を求めてやって来ます。でも、いざ日常という暇つぶしから解き放たれてしまえば、即座に暇を持て余します。
瀬戸内の穏やかな海は、旅人の心を和ませます。でも、太古から変わらない景色は、いくら見ても変化がなく、従って、飽きてきます。仕方なく、人を眺める。
青空の下、原っぱでキャッチボールに興じる若い男女がありました。女は時々、素っ頓狂な方向にボールを放り、男は、長い手足を駆使してそれを追います。
男は、女の胸元を目掛けて正確に、そして優しくボールを放り返しています。無人島での昼下がりの過ごし方として、それは、とても似つかわしい作業でした。
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