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例えば、夢と現を往返する白皙の幼子がいるとして ~ 第三話 母親の苦悩 ~


 ある日、男がいつものように病室に入り、手紙を少女に渡そうとすると少女はそれをさえぎり、男に手紙をさしだした。男は少し驚き「この手紙はなぁに?」と少女に聞くと、少女は「この手紙をその子に渡して欲しいの」と照れくさそうに言った。

 「分かった渡しとくよ」男はにっこり微笑むとその手紙をポッケにしまい、いつものように持ってきた手紙を読みはじめた。

 それから…だんだん明るくなっていく娘に母親は嬉しくなっていきましたが、残された時間はそう長くはありませんでした。

 医者から「臓器提供がこのままない場合、あまり長く生きられない」と知った母親は寝かしつかせて気持ち良さそうに眠る娘を見ながら果物ナイフを手にするのだった。

 『いっそこのまま楽にさせようか…』母親は震える手でナイフを娘の首もとに近づけたとき、娘は目をつぶったまま微かに微笑みながらポツリとつぶやいた。
 「いいよ、お母さん」
 母親はそれで泣き崩れ、ナイフをベッドの下に落とすのだった。

 そのとき病室のドアからその様子をそっとうかがっていた男は何もいわず病室をあとにした。

 その日からしばらく男は病室を訪れない日が続き、少女は不安な気持ちがだんだん大きくなっていきました。

#レイチェル #例えば夢と現を往返する白皙の幼子がいるとして  #例えば喉元に刃があてがわれたとして


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