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メロディーメーカーKANさんへ捧げる手紙

KANさんにまつわる、ゆるめのコラムです。

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「メロディーメーカー」(優れた作曲家)という言葉で、私が思い浮かべるのがKANさんだ。

私は音楽について、専門的なことは、よくわからないけれど、彼が作るメロディーのよさはわかる。聴けば

「あー、やっぱり、KANさんだな」 

と唸らせられる。


そんな彼との出逢いは、私が大学生の頃だった。

ラジオから流れてきた「愛は勝つ」。
この曲が当時、付き合っていたカレとの行き詰まってしまった世界に、風穴を開けてくれた。

「ここから抜け出せば、新しい幸せに出逢える」

彼の歌声とメロディーが、そう気付かせてくれた。

この曲を聴いて、彼と別れたという人は、そうそう、いないだろうけれど、この曲にも背中を押され、私は次の出逢いへの一歩を踏み出したのだった。


それから、彼の曲を聴くようになり、コンサートへ行き、ファンレターを書いた。

彼が書いた本を読み、彼のラジオ番組を聴き、音楽雑誌で彼の記事をチェックしていた。

けれど、そのうち、他にも気になるアーティストが出てきたりして、彼から、しばらく遠ざかっていた。


今年に入って、彼の病気のことを友人から聞かされた。

シャレにならないことが起こってしまった、という彼らしい口ぶりに、いつかきっと、寛解(KANかい)になるだろうと思っていた。

だから、テレビで彼の訃報を知った時、心の中で叫んでいた。

ちょっと待って、約束が違う、それはないよ、と。


さっき、ネットで、彼の葬儀の記事に続いた「みんなの投票」というコーナーに「KANさんの曲の中で、最も印象に残っているのは?」とあるのを見つけた。

すでに、上位10曲ぐらい表示されていて、その中から選ぶか、それ以外なら「その他」を選べるようになっている。

どれにしようかと迷っている間に、ふと気付いた。表示されている投票人数が、刻々と増えているのだ。さっきまで、15,000人台だったのに、いつの間にか16,000人を越えている。

それは、まるで、彼を想う人たちが順番に花をたむけているように思えた。

その人たちの心の中に、今も、彼の歌がある。折にふれ、彼のメロディーはよみがえるだろう。

これからも、何度でも。 


風吹きて 君のメロディーが流れ出す
心の中で生きている人


この記事は彼に綴った、最後のファンレターでもある。

なんだ、ずいぶん、久しぶりだねって、読んでくれているだろうか。

あの、ほほえみを浮かべながら。



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