中級者向け 物語構造を元にしたパートメイキング「試練」「調達」「欠落」「回復」「依頼と代行」「報酬の支払い」「難題」「解決」「罪を犯す」「処罰」そして「謎」 クリエイターの為の批評コラム

前回はこちら。

前回同様物語構造を使用したストーリーメイキング。今回は2つで1組の関連したパートを構成する構造ユニットです。


「試練」→「調達」。「お使いイベント」みたいなもので、クエストを達成してキーになる物(徴{しるし}等でもよい)を得る一連の展開。障害の仕掛け方が多々あり、サポート役のが実は「幇助」していたり、思わぬ存在が黒幕であったりという意外性を仕込めるブロックを構成します。基本的に、まとまったパートを構成するユニット群は様々なユニットを付加できるブロックとして出来上がっていると考えてよいでしょう。そうなる理由は単純で、その方が物語らしく、盛り上がる展開が作りやすいからです。

「欠落」→「回復」。「ない」「このままではいけない」ので旅に出て「なんとかする」ブロックを構成するパート。というか、物語全体を貫く大目標(一時的でも)であるというだけで、それ以外の流れは「試練」→「調達」と大差ないですね。このブロックが入れ子の大枠で、その中に小枠としてサブクエストがあるみたいな。ただ、主目標だけあって長期間モチベーションが維持される事にはなるものの、しかしながらどんでん返しが全くない訳でもなく、むしろ挫折し無意味化する事で真の目標が明らかになってからが本番、という長期連載パターンに繋げられるます。つまり目標は展開次第で掏り替わっていってしまってもよく、一貫する以上に面白くする事が出来るなら積極的に掏り替えてしまうのが上策かもしれません。

「依頼と代行」→「報酬の支払い」。探偵物、プロフェッショナル・スペシャリスト物の枠組ですね。このパターンの作品は最終的に「何故代行業を始めたのか」「やり続ける目的は何なのか」辺りが物語の大枠を定める、締めや落とし所のポイントと言えるでしょう。依頼内容もそうですが、報酬の受け取り方、報酬の内容、報酬の使い方等でバリエーションを作ったり、途中の展開をサスペンス、バイオレンス、ラブコメ、ヒロイック、ヒューマンドラマ等の豊かな色どりに溢れた雰囲気にしていく事で、受け手を飽きさせずに展開できます。ウケが良いのでよく使われているからこそ、利用する際にはキャラクター性と世界観とが重要となるのではないでしょうか。

「難題」→「解決」。これまで何度も触れてきたモチーフですが、改めて。大それたものからちょっとしたとんちまで、枠組としては大にも小にもなり、その割に安定してそれなりの効果が期待できる構造ユニット。「答え・解き方が分からない」という意味では「謎」と呼ぶ事も出来るでしょう。「謎」の場合、「目的・理由が分からない」→「明かされる」という形で「虚偽の認識」→「真相の解明」(フリとオチ)の変形、偽や誤解ではなく「『分からない』という事が分かっている」状態にある為、「分かろうとする」事が出来ます。つまり追及出来る。「虚偽の認識」の場合はそれが正しいと思い込んでいて疑わないので、「謎」を感知できないまま追及せずに踊らされてしまうのです。「虚偽」ではなく「謎」である、という事は、主人公はそれに向かっていく姿勢になれる、という状況を作ります(誰がどのように情報を提供するのでしょう?)。

「罪を犯す」→「処罰」。プロップの「31の機能」では「処罰」される対象は敵なのですが、味方なり主人公なりにも罰が下る話はいくらでもあるので、原因たる「罪」と合わせてこういうブロックにしました。偽の主人公の詐称が「露見」するだけでなく主人公側の因果応報を描くにも使え、アニメ『伝説巨神イデオン』では「全員が何らかの罪を犯していた為最終的に全キャラクターが処罰され、全滅する」という壮絶極まりない展開で終局を迎えました。そこまでやらなくても、「罪」に対して「罰」が下るというステップは説話のパターンとして使いこなされてきたものでもありますから、敵の罪が暴かれる事で主人公が濡れ衣を着せられていた(「欠落」なり「難題」なり「謎」なり)と分かる(「回復」「解決」「解明」)等の応用を利かせる他のバリエーションも加えて覚えて使えるとよいかと思います。


以上、第1部・完。



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比那北幸@批評
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