「いずれAIが解決する」は何も言っていないのと同じ(AIの論点) クリエイターの為の批評コラム

前回はこちら。


AlphaGoがイ・セドル九段に勝利して以来、AIはバズワードになりましたが、人々を騒がせ続けている人工知能について僕の思うところを書いておこうと思います。

まず、人工知能について押さえておくべきポイントは以下の5つ。
・計算速度
・学習速度
・消費電力
・物理的スケール(人型にするならロボティクスも)
・製造、管理コスト(量産技術も含む)

これらはいずれも、将来的には解決されるでしょう。シンギュラリティは必ず訪れ、AIはすべてを解決するようになる。

なので、問題は「いつ」「何が」実用化されるかであって、「いずれAIがすべてを解決する」というのは「いずれ太陽の寿命が尽きて地球が滅亡する」と言うのとほぼ同じです。

「いつだよ」と。

AIの場合「職を奪うんじゃないか」という不安も誘発しているため「何が」実現するのかも重要です。そして「何が」「いつ」実現するのかによって社会に与えるインパクトは大きく変わってきます。その衝撃の程度も、質も。


どのタイミングで何が実現するのか。どの分野であれ研究開発の正確な予測は困難を極めます。まして発展速度の異常に早いIT分野の事、どこで何が起こっているのか、誰が何を作っているのか、状況はめまぐるしく変化し、市場の反応も予想がつきません。こうした中で将来の変化の予想を的中させる事は至難の業。

つまりAIも含めたITに関しては、実現するまで何が起こるか分からない。

精度の高い事前予測がまず不可能である為それに便乗した対策や展開を外部で用意するのはまず失敗するでしょうね。何かやるつもりでいるならとにかく実務に従事する専門家と手を組む事です。

少なくとも言論で何かしようとしても時事ネタに乗って底の浅い事を主張する程度が関の山でしょう。僕は以前コミュニケーションの相手として生身の人間より拡張現実的な虚構のキャラクターの方が求められてくるのではないか、と書いた事がありまして、同時に科学技術の与える決定的なインパクトとその発展速度が社会と人間を大きく変える可能性についても述べたのですが、「結局、技術がいつ何を変えるのか分からない」というのがネックになって、この方面で批評的思考を展開・洗練するプランは破棄しました。

先が読めないので批評的に面白い事が書けそうにないんですよ。漠然とした予想とか突拍子もない夢物語を語る事ぐらいしか出来ない。

話が逸れたついでにもう少し逸らせますと、「人工知能と喋ってみたい」「AIと結婚したい」という人が実際に現れ始めまして、「あ、そういう人がホントに出てきたんだ」となかなか興味深かったんですが、「喋ってみたい」はともかく「結婚したい」となるとさてどういうつもりなのかな? と思うんですよね。

というのは初めに書いた通りAIには程度があって、どの水準のAIと結婚したいのかって観点がすっぽり抜け落ちてる。今だってAIはある訳で、何を実現したどんな機能を持つAIがお望みなのか、考えた事があるのかと。

これがクリエイティブな仕事をする人達だったりすると「認識そのレベルかよ!」と突っ込まずにいられません(やりませんが)。中には「シンギュラリティ早く来い!」って言ってる人までいて、いつ実現するかも分からないそれに期待するのはいいとしてそれまで貴方は何をやるつもりでいるんですか、と尋ねたくなります(訊きませんが)。

1つの結論として挙げられるのは、「AIに期待をかけるのはAIに携わる当事者だけにしておいた方が無難」でしょうか。

結局、未来を正確に予測するには自分がその未来を創造してしまう事なんでしょうね。


しかしながら研究者が頑張って次々と新しい機能を実現したとしてもそこで未来予測の結果が出る訳ではなく、市場原理や社会的対応が待ち構えています。この辺りはあらゆる製品開発と同じですね。シェアを占められるか、消費者に受け入れられるのか。モノがAIですから法的な整備も必要かもしれません(ロボットも同様)し、予測不能の変化に柔軟かつ適切に対応できる体制が社会に備わっているのか、という点も見逃せません。

このフェイズになるには前述した「製造、管理コスト(量産技術)」がクリアされなければなりませんが、ここが1つの壁なんですよね。実現はしたがバカ高い上に製造に膨大な時間がかかる超高性能AI、というのが予想出来ます。マザー・コンピューターのようなものを想定してもいいのですが、多くの人が思い描いているのはもっと安価で手軽に使える普及型のAIでしょう。

でも恐らく最初の人間並みのAIは一点もの、希少品として登場するでしょうから、そういうイメージとは異なる出方をするでしょうね。

この「数」「値段」は猛烈に重要で、極端な想定をすれば「人間以上の性能の人工知能を3日で使い捨てる」みたいな使い方も考えられる訳で、スマホや企業向けロボットを前例とするなら「どの型のAIが」「どの層に」「どれくらい」普及するか、は何かしらのターニングポイントを示す事になるかもしれません。


僕はどうしても批評的思考から抜け切れないのですが、研究・製造サイドとして従事するのでなければ、AIに関してはAlphaGoやポケモンGOの時のように「実現してから理解する」「いち早くそれを体験する」くらいしかやれる事はないのではないでしょうか。

という訳で、後手に回る事が確定している以上「対応は後で、自分の仕事を先に」が好手かと思われます。

どうせすべての要素を十分に満たすだけの技術革新が起こるにはまだまだかかるでしょうから、技術関連情報の収集を怠らない程度の対応をしつつ、来るべき時までに人の手で何を実現しておくか、に注力すればいいのではないかなと思います。


来るぞ来るぞ、と思っている内に先に寿命が来るかもしれませんから。





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比那北幸@批評
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