中級者向け 物語構造を元にしたシーンメイキング「敵対行為」「戦い」「敵の勝利」「迫害」 クリエイターの為の批評コラム

前回はこちら。

前回は物語構造とキャラクターメイキングとリアリズムの話でしたが、今回はとりあえず盛り上がるシーン作りという観点から書いてみたいと思います。というのも「31の機能」の内もう残っている要素が少なく、それらも特に話が広がらなさそうだからなんですが……。

全体に共通するコツとしては、ただ構造ユニットを使うのではなく「逆行する感じ」を利用する事。他には物事がすんなりいかないように常に何か「乗り越えるべき障害」や「解決すべき難題」を用意して「出来ない」を「その手があったか!」に変える。又は伏線や前フリを利用して「思いもよらない何か」で突破するとか。

これまでも触れてきた「逆行する感じ」、「難題」→「解決」、「虚偽の認識」→「真相の解明」を使って意外性や完結性を演出しましょう。


「敵対行為」。「31の機能」では序盤に行われる「欠落」を生じさせるシークエンス。ここでしっかり悪役敵役の特徴(外見や口振り)や悪さを印象付け、目的を明かしてしまうのもアリでしょう(それが「虚偽」で→「真相」の為の前フリでもOK)。これによって主人公が旅に出たりで物語は動き始めたりするのできちんとコントロールしましょう(敢えてショボくする事でギャグにもできますね)。

「敵対行為」を行う敵の目的も重要なんですが、そこに至る具体的な流れも必要で、「31の機能」では「不在」から始まり、「禁止」「違反」「探査」「漏洩」「悪計」「幇助」という展開の後に「敵対行為」(=「欠落」の発生)が来ます。いきなり敵に襲われるのではなく、どこか油断したり隙があり、探りを入れられ、内情が知られた上で、騙されて手伝わされたりという徐々に展開する計画性のある悪さがあるので、1つの参考になるでしょう(これをそのままワンパターンで使い過ぎると単なるロシアの魔法民話っぽい話になってしまうのでバリエーションを持たせ、ウケる形に仕上げるのが大事です)。


「戦い」。「出発」「調達」「道案内」等を挟み、敵との戦いに入りますが、主人公の目的は決して勝つ事とは限りません。「欠落」のあり方によっては盗まれた物を取り戻すだけでよいとか、呪いを解かせたり病気を治させたり、データやパーツや人質を取り戻す為の旅だったりするので、「31の機能」ではこの後に「敵の勝利」という項目があります。敵が戦いに勝っても、主人公の目的が果たされればそれでよいのです。ライバルに負けて恋を射止める主人公もいるでしょう。

「戦い」には様々な種類があります。スポーツやゲームの試合、ファッションや料理のコンテスト、文化祭や地元の祭りの出し物の集客数や売上、ダイエットや選挙戦など、世界観に合わせて勝負は何処にでもいくらでもあるものなので、これ、というオリジナルな戦い方をテーマに応じて作ってみるのも楽しみの1つではないでしょうか。

また「31の機能」では「戦い」から決着がつくまでの間に「照準」があるので、戦いが始まってからライバル視される展開があるのも不思議ではありません。何も常に因縁の戦いである必要はなく、なし崩しに激闘が繰り広げられても一向に構わないのです。


「敵の勝利」。必ずしも主人公が勝つ必要がないとは書きましたが、別に敵が必ず勝つ必要もありません。ただ、敗北から奮起する主人公というのは燃えますね。勿論「試合に負けて勝負に勝つ」とか「スポーツでは負けたが目的は果たした」とかでもよく、ここに一種の「逆行する感じ」が宿っている事も指摘しておきます(更に裏をかいて「試合に勝ってしまって目的が果たせなかった」という「逆」も作れますね)。


「迫害」。「主人公が白い目で見られる」とでも言うようなシークエンス。この前に何があったかがポイントで、あれが原因でこうなった、とはっきり分かるか説明されている場合と、「何故か突然白眼視されるようになった理由が後から分かる」場合とがあります。これは「敵」ではなく「一般」「オーディエンス」「世間」の反応を示すので、具体的なエピソードはそう多く描かなくても伝わりますが、しつこく描写する演出効果で魅せる事を狙うやり方も使えます(世界観次第で「迫害」の具体的な現れ方は変わりますよね。今ならLINEの描写がベーシックなのでしょうか。時代が違えば石を投げられたりするでしょう)。


今回提示したこれらの構造ユニットは「キャラクターの関係性」を直接的な接触として描くユニットです。単独の行為と違って、これらのシークエンスではキャラクター性を前面に押し出し、その魅力を描くのに絶好の機会。対比させ衝突させ、策略や企み、大胆さや弱さや運の良さ、咄嗟の機転や身勝手さ等、「らしさ」をいくらでも放り込めるボーナスステージみたいなものなので、「逆行する感じ」も含めて効果的に演出しましょう。

各構造ユニットには前後関係や因果関係があり、それを効果的に見せる順番を決めるのがプロットです。受け手にどんな風に感じてもらいたいのか、どの順で見せれば思ったように感じさせられるのか、あれこれ試行錯誤しながら想定し、経験を積むのも1つの方法かと思います。




続きます。



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比那北幸@批評
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