「プロ」に必要なのは「筆をおく勇気」
フリーライター&イラストレーターの陽菜ひよ子です。
アマチュアとプロを分ける境界線は何か、とはよく言われることです。上手いか下手かでいえば、明確なプロテストが存在するものは別として、プロより上手いアマチュアはいくらでもいます。
では、何をもってプロと呼ぶのか?といえば、一応プロと名乗って20年近くが経つわたしが思うのは「自分がプロだと『覚悟』すること」。これに尽きるんですね。
なんだ、精神論かよ!と言われそうなので、もう少し具体的にお話したいと思います。
仕事をする上で一番大切なもの
最初に質問をします。「プロにとって一番大切なもの」とは何でしょう?これはどんな仕事でも同じかもしれません。
それは「納期」(締切り)です。
まずは「完成」させて「提出」することが何より大事。
イギリスのコンテスト番組「ソーイング・ビー」では、ランキングの最下位は常に「未完成」の人です。どんなにデザインが良くても細かなディテールが素晴らしくても、未完成のものには価値はない。
プロ中のプロであるパトリックやエズメの信念なのかもしれません。
「完成」は作り手が決める
ここまでは当然といえば当然のことですが、ここから先が重要です。
「未完成」とは、明らかに「できあがっていない」状態だけを指すのではありません。見た目でできあがっているように見えても、本人が「まだ完成していない」と思えばそれは未完成。「完成」とは、作り手が決めることだからです。
そして、一見「できあがったように見える」のになかなか「完成」できないことは、よくあることなんですよね。
「文章はひとまず完結した」「絵はひと通り塗った」など、完成したのに「どうもしっくりこない」それはアマチュアだけでなくプロにもあります。
え?プロなんだからいつも完璧でなくてはいけない?そんなの無理です。
もちろん、人前に出すときには限りなく完璧に近い状態にすべきだとは思います。しかし、プロだって人間。調子の出ないときもあれば、体調がイマイチのときだってあります。
常に80点を取る「覚悟」
これは何度もこのnoteに書いているのですが、プロとは「常に80点」を取れる人のことだと思うんです。
もちろん「常に100点」取ることが理想です。でもいつでも万全な状態で作品をつくれるわけではありません。どんなに注意していても体調を崩すことはあるし、自分以外の誰かの都合で時間が取れず、超特急で作品をつくらねばならないこともあります。
通常であれば50点しか取れないような状況のときでも、言い訳せずに絶対に80点は取りに行く。それがプロに求められる姿勢だと思います。つまり「何があっても絶対に「80点を取るのだ」という「覚悟」を持つこと、それがプロであるが所以。
それでも筆をおく「覚悟」
もちろん、80点で満足しているわけではないのです。もっと書けるはずなのに書けない。もっと時間があれば、この風邪さえなおれば。いやもともと自分は大したことないんだ、もう無理なんだ、と打ちのめされたりしながらもがきます。
それでも締切りが来れば筆をおく「覚悟」もプロには求められるのです。
あるメディアで仕事をしていた時のこと。最初の企画会議でおもしろい企画を出して、一躍その場のヒーローになった人がいました。まだライターになって日は浅いのですが、ポテンシャル高そうです。
しかし数カ月が経ち「そういえばあの企画どうなった?」担当者によると、その方は企画は立ち上げるけど書き上げることができないんだそうで。ほかのメディアでも同じようなことをやっているらしいとのことで、結局そのメディアをクビになってしまいました。
筆をおく覚悟の先にあるのは、他者からの評価。編集者にダメ出しされることもそうだし、運よく(?)編集でOKが出ても、自分では不本意なまま、世間のジャッジにさらされるのです。
それがわかっていても筆を置く「勇気」があること。それこそが、プロがプロである所以なのだと思います。