思春期の非言語的精神療法について
2016年5月。「思春期の非言語的精神療法」というテーマで市立旭川病院精神科の武井先生のお話(セミナー)を聴きました。自粛のため過去を振り返ってしまいます。武井先生はいつも面白い事例をたくさん話してくれて個人的にすごく好きです。
「非言語的」というのは何か?
と疑問に思う方もいると思いますが言葉を用いないコミュニケーションのことです。
ノンバーバルコミュニケーションと言われたりもします。
言語の違う国の方とお話しようとなった時には何を使うか?
表情や目ぶり手ぶりなどを使って意思を表現しようとしますし、意思の受け取りも首を縦や横に振ったりします。
また、別の場面では親密な関係にいる人とは近い距離にいれますが
そうでない人とは物理的に距離をとります。
これで相手の気持ちがわかります。
このような様々な相手の姿勢で、相手の思いをくみ取ることを動物・人は無意識に行っているはずです。
今回のセミナーでは
風景画や気付き法等の描画や箱庭療法での事例をお話しされていました。
描画も表現の一つです。
箱庭療法とはこんな感じです。
遊戯療法から派生したアートセラピー(芸術療法)のひとつです。砂のはいった箱(=箱庭)の中に、小さなおもちゃなどのアイテムを自由に並べていきながら自由に何かを表現します。基本的にはアートセラピストとクライアントの1対1で行われました。
箱庭療法は、セラピストが見守る中、クライエントが自発的に、砂の入った箱の中にミニチュア玩具を置き、また砂自体を使って、自由に何かを表現したり、遊ぶことを通して行う心理療法です。 通常、箱庭療法だけを独立して行うことはなく、言語的面接や遊戯療法のなかで、適宜用いられる方法です。
この療法では、砂やミニチュア玩具のイメージを活用してアイデアを広げ、上手下手ではなく、具体的な現実生活に近い表現から抽象的な非現実的な表現まで可能です。よって、言葉にならない葛藤、イメージを表現しやすいのです。
箱庭療法は使い方によって内容を説明するのには少し違いが出ます。しかし、共通するところは「表現を見る」ということです。表現したことで治療になるのではなく、治療につなげるための1つの考察として箱庭療法を使うというほうがよいでしょう。
内なる欲求
初めは言葉にできない子たちも、非言語コミュニケーションをとおして
治療を受ける中で徐々に思いを言葉で伝えてくれるようになるとの事でした。
やはり遊びは子どもの姿をあらわしたり、気持ちを通わす大切な人間活動とのことでした。
熊本で震災があり、「手だけ地震~」と遊んでいる子がTVに移り、不謹慎だ!などと批判されていたことがありますが
子どもたちは自分のトラウマを遊びの中で表現する中で自分の気持ちを治療することが出来ます。
遊びの中でそのトラウマと向き合い、乗り越えることで現実を受け入れることができるそうです。
このドラマでは阪神大震災の被災下で子どもたちがそのような遊びをしているシーンがあります。精神科医の安和隆先生がそれを見て同様のお話をしています。
普段はおしゃべりでも
普段は止まらないほどお喋りな子でも、「今何したい?」などと意見や欲求を尋ねると、どうしたの?と思うくらい静かになる子や全然関係ない話をする子がいます。言葉は思っているほど意味を含まなかったりします。言葉がその人の人格のすべてではありません。
文字が書けない、お話しがうまく出来ないとお悩みでいる保護者・支援者の方だけでなく、うちの子って何を考えているかわからないというお子さんも描画や砂遊び等の制作物に目を向けてみてはどうですか?
楽しそうな絵を描く子、造形が壊れた粘土を作る子、何も浮かばない子・・・
本当に様々表現があります。
子どもたちが何を表現しているか、見立てでしかありませんが子どもたちの意識に触れられる場面だと思います。
現在、家にいる時間が長くて逆に距離が近すぎて見えないものもあります。子どもは意外と内に秘めているものがたくさんあります。
ままごと遊びも表現の1つです。言葉に引っ張られない子どもたちの内言語を感じませんか?