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オフィスひめの通信 20号
執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2012年3月
-子どもの食事を考える! 成長期~受験期の栄養-
子どもの成長曲線は生まれた直後の1年間が最も急でその後緩やかに上昇し10歳ごろから再びやや急になります。一般に女の子の方が早く身長増加の時期を迎えるため小学校5、6年生では男子生徒より女子生徒のほうが身長が高くなる状況が起きます。個人差はあるものの中学生(13歳以降)になると男子生徒の伸びが目立つようになり17歳ごろまで伸び続け、女性の身長の伸びは14~15歳ごろにはかなり緩やかになります。
この時期は第二次性徴期とも呼ばれ性ホルモンによって男性として女性としての体の変化が起こります。昨今は月経の始まり(初潮)がやや早まる傾向があるようです。
体の成長に合わせて栄養の必要量も増えています。女性の場合には月経の始まりとともに鉄欠乏の可能性が高くなります。これだけの変化を支える食事はきちんと摂れていますか?
地域によっては小学生の半数が中学受験をするようです。中学受験の入試問題は大学生でも解けないような難しい問題が出るので塾通いをする方も多いことでしょう。教育環境を選ぶのは大切なことですが、この時期の食事には格別に注意が必要であることをしっかり心に留めてください。学校から塾の間におにぎりや菓子パンで簡単に食事を済ませ、夜遅く帰宅して夕食をとり睡眠不足で朝ご飯を食べられないまま登校するような生活では、この成長期を支えることは出来ません。
子どもが心身共に健康に成長できるように、まずは栄養をしっかり摂れるよう心を配りましょう。
-成長期の鉄欠乏は学習能力・運動能力にも影響-
きちんと食事を摂っていても成長が活発な時期には供給が需要に追いつかない時期があります(図矢印)鉄は脳の発達にもたいへん重要なので言語や運動能力の発達にも大きな影響を及ぼします。
朝早く起きられない
学校から帰ってくるとごろごろしている
集中力がない
午後の授業の居眠り
肩こり・めまい・食欲不振
動悸・息切れ
しびれ感・足がだるい
冷える・寒がる
これらはすべて鉄欠乏症の症状です。鉄欠乏は一般的な検査では見つからないので「検査で異常がないから心療内科や小児精神科へ行った方がよいのではないか?」「発達障害の検査を受けたほうがよいのではないか?」と言われてしまうことがあります。鉄欠乏は疑わなければ見逃されてしまいます。上記の症状を見たらまず鉄欠乏を疑って専用の検査をしましょう。
-思春期の痩せについて-
よくも悪くも思春期は自分を意識し始める時期ですから、容貌や体形が気になります。
ファッション雑誌などで痩せてすらっとした脚の女性を見ると自分もそうなりたいと思う気持ちもよくわかります。日本の若い女性は世界的に見るとかなり痩せているようです。
美しいというのは健康美も兼ねているはずです。不健康な痩せ方では美しく見えません。
体重は減っても骨がすかすかで筋肉が少なく脂肪ばかりで、隠れ肥満になっている女性が結構多くいます。そのような方は皮膚のつやや張りもありません。隠れ肥満は食べすぎではなく代謝の低下によって起こります。代謝の低下=必須栄養素の不足です。今より痩せたいと思う方は糖質・炭水化物を減らす糖質制限食を実行しましょう。必ず満足のいく結果が得られるはずです。脂肪が減り筋肉が増えると体重は増えることがあります。糖質制限食では体重変動がなくなったらそこが理想的な体重と考えましょう。筋肉質で代謝の良い引き締まった体になり毎日の生活にも健康感が得られます。思春期に女性ホルモンが増えるとある程度の皮下脂肪が付きます。それが自然な美しいラインを生みます。最近の雑誌では健康に痩せる特集もされているようですから若い方もぜひ参考にしてください。
亜鉛の話2 ~亜鉛は何をしているか?~
亜鉛は全身すべての細胞に存在します。鉄は小腸や肝臓・脾臓(ひぞう)、カルシウムなら骨、マグネシウムは筋肉と貯蔵の場所がはっきりしているのに対し、亜鉛は貯蔵庫を持ちません。
ただし分裂の盛んな組織には高濃度に存在します。遺伝子を調節するたんぱく質のいくつかはZinc fingerという構造を持っています。
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Zinc fingerは亜鉛を中心にしてたんぱく質がループのような構造をとっています。亜鉛が欠乏すると分裂の盛んな組織ほど影響が強く出ます。
例えば、皮膚や粘膜、精巣や前立腺などです。前立腺肥大や男性更年期を疑って受診された方にも亜鉛欠乏が多く見つかります。
味(み)蕾(らい)も入れ替わりの激しい細胞です。亜鉛欠乏で味覚が変わるのは有名な話ですよね。
細胞分裂とは別に、亜鉛は血糖調節にも重要な働きをしています。血糖値を下げるインスリンの合成と分泌に必要です。血糖調節異常(機能性低血糖症)や糖尿病の人には亜鉛欠乏が認められることが多いようです。特に男性で境界型糖尿病と言われたら亜鉛欠乏を疑いましょう。
冬の季節には牡蠣鍋なんかがいいですね。亜鉛は魚介類、煮干し、ゴマなどに含まれていますが一度にたくさん摂るのは大変です。毎日の生活に上手にとり入れましょう。
~食事療法の嘘? 本当?~
-糖尿病は万病のもと-
「風邪は万病のもと」とは昔からよく言われます(これは風邪そのものが他の病気のもとになる場合と最初は風邪のように見える重大な病気がたくさんあることを経験的にあらわしたもののようです)。
今回は「糖尿病は万病のもと」という話とその理由についての話です。糖尿病だと肺炎や傷の化膿など感染症が重症化しやすいこと、心筋梗塞、脳梗塞、動脈が詰まった結果起こる足の壊疽(えそ)が起こりやすいことはよく知られています。最近はそれに加えて癌の発症率が高いことが知られるようになってきました。これらのおおもとの理由は同じものです。
体には病気を防ぐ仕組みがたくさんあります。その中でも感染の防御と活性酸素の消去はとりわけ重要です。この二つを担う大事な栄養素にビタミンCがあります。ビタミンCは血液中を運ばれた後必要な細胞にどんどん入っていきます。細胞膜を通過できないため膜の運び屋(担体(たんたい))と一緒に入ります。この時ぶどう糖を細胞内に入れる担体と同じものを利用します。(図参照)
![](https://assets.st-note.com/img/1729592849-qiHUvGzn4Yb0yW5LTSQdMfRp.png)
糖尿病では血液中のぶどう糖濃度(血糖値)が高いので通常のビタミンC濃度では細胞内に入ることが出来ません。その結果細胞内のビタミンC濃度が大変低くなります。また血液中で抗酸化に使用された使用済みビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)を再生するためには一度細胞内に入れる必要がありますが、細胞内に入ることが出来ないので血液中のビタミンCも効力のない使用済みビタミンCばかりになってしまいます。
細胞内では活発な代謝が行われるので常に活性酸素やフリーラジカルが発生しています。活性酸素やフリーラジカルのやっかいなのは、連鎖反応を起こして少し離れた組織にも傷害を起こすことです。結果、遺伝子や細胞膜など複数の領域に傷が付き発癌の原因となります。
この状況を改善する方法は二つ! 血糖値を上げないこととビタミンCの濃度つまり摂取量を増やすことです。健康に良いことには理論的根拠があるのです。
暮らしに役立つ栄養療法-受験後症候群に気をつけて-
合格してのびのびと自由な生活を満喫する人がいる一方で、せっかく合格したのに体調がすぐれず新しい環境になじめなかったり朝起きられなかったり気力がわかなかったりして不登校になっている人はいませんか? 長期間の頑張りの後ですからゆったり休むのも一案です。でも焦りばかりを感じているなら解決する方法を探してみましょう。
受験は人生最大のストレスです。精神的なプレッシャーはもちろん長時間の勉強も体を酷使する出来事です。体はそれに対抗し適応するためエネルギーや物質を作り続けます。この時期に糖分ばかり摂っていると、エネルギー産生や物質合成に必要なビタミンB群やたんぱく質が不足してしまいます。ストレス対抗にはビタミンCも不可欠です。
大学生に難解な数学問題を解いてもらって前後の尿中ビタミンB1代謝物を測定した実験では前より後の排泄量が明らかに増えていたそうです。また寒冷ストレスを与えた時と今回のような数学問題を解いた時で同じようにカルシウムとマグネシウムの尿中排泄が増えていたそうです。どんなストレスでも体は物質的に反応していることが証明されて大変面白い実験ですね。
体は物質=栄養素で動いています。受験期こそたんぱく・ビタミン・ミネラルを摂りましょう!
サプリメント小話-イチョウ葉-
今回はイチョウ葉エキスのご紹介です。イチョウの青い葉からの抽出物(フラボノイドとギンコライド)は細胞組織への血液の循環を改善することが知られていて、すでにドイツなど世界40カ国以上で医薬品として発売され、脳機能不全や末梢血管障害の治療に使われています。
血流改善作用は、細い動脈を広げる一方で静脈は収縮して血圧を調節したり、血液の粘性を減らしたり、酸化ストレスを減らしたりなど複数の作用が相乗効果を生んでいるようです。脳梗塞などによって脳の血流が減っている場合、イチョウ葉エキスを服用することにより脳の血流量が8%以上も増加したというデータがあります。また一度途絶えた血流が再開するときに大量の活性酸素が発生しますがイチョウ葉エキスにはそのような活性酸素を消去する働きもあります。
脳だけでなく手足の循環を改善して冷えやしびれの症状を改善したり内臓の血流を改善して消化吸収をよくする効果もあります。
日本にはイチョウの木がたくさんありますから、葉をとってきて煎じて飲めば?と思われた方はいらっしゃいますか?まだ青いイチョウの葉にはかぶれの成分があるため、きちんと有効成分だけを抽出したものを使用する必要があります。また黄色くなって落葉した葉では成分が変わってしまうため効果がないようです。
病気の予防や改善だけでなく脳の血流を増やしたい受験生にもぜひお勧めしたいサプリメントです。
-子どもの頭痛-
頭痛というと大人の病気のようですが、小学校の高学年から中学生ぐらいになると時々頭痛がするというお子さんは少なくありません。頭痛があるのが当たり前だと思って特に言わないお子さんもいて周囲は気付きにくいようです。また母親や祖母が頭痛持ちの場合には何となく「片頭痛」として片付けていることが多いようです。
頭痛は重大な病気のサインのことがありますから、突然強い頭痛があったらきちんと検査したほうがよいのはもちろんです。ただ検査でも異常がなく日常的に何となく頭痛がある場合鉄欠乏症と機能性低血糖症が隠れていることがあります。
鉄欠乏症や機能性低血糖症を食事とサプリメントで改善した結果、頭痛の頻度が劇的に減った方もたくさんいます。頭痛のある方はぜひ一度検査をお勧めします。
※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。
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